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中日3位・勝野昌慶はMVP、DeNA3位の大貫晋一は好投。ドラフト指名選手の日本選手権をチェック

取材・文=久保弘毅

中日3位・勝野昌慶はMVP、DeNA3位の大貫晋一は好投。ドラフト指名選手の日本選手権をチェック

中日3位・勝野がMVP!


 ドラフト直後に行われた社会人野球の日本選手権で、プロから指名された選手が活躍した。なかでも強烈なインパクトを残したのが、中日3位の勝野昌慶(三菱重工名古屋)だった。

 2回戦のJR東日本東北戦で8回途中まで1失点に抑えると、準決勝の東芝戦では9回完封。2回までに5四球と制球に苦しみながらも、修正して最後まで投げ切った。翌日の決勝では8回裏途中からマウンドに上がり、延長10回までJFE西日本を0点に抑えた。

 試合は延長13回表に山田敬介の内野安打で1点を奪った三菱重工名古屋が勝利。勝野は最高殊勲選手に選ばれ、優勝を置き土産にプロへと進む。少々のピンチにも動じることなく、強く腕を振り切る姿に、中継ぎで即戦力の期待がかかる。

遅咲き右腕も実戦力を証明


 DeNAから3位で指名された大貫晋一(新日鐵住金鹿島)も、社会人での最後を締めくくるにふさわしい活躍ぶりだった。1回戦の三菱重工広島戦で2対1で完投勝利を挙げている。打者の懐を突いたり、ボールを少しずつ動かしながら、積極的に振ってくる三菱重工広島打線から11個の三振を奪った。大貫自身は「最後まで投げ切る力がつきました。最後まで信頼してもらえたのも嬉しかったです」と話していた。

 本人の感覚では、ストレートはさほどよくなかったが、正捕手の片葺翔太が「大貫には内角を続けられる制球力がある」と言うように、前半に内角攻めのイメージを植えつけ、後半の外角勝負につなげた。得意のツーシーム以外にも、スプリットとスライダーが冴え、相手に的を絞らせない投球内容だった。

 大貫は今後の目標を「もっと体を大きくしたいし、球速も上げたい」と語っていた。大卒3年目にしては細身で、体重は68キロ。ストレートもこの日は最速で144キロだった。数字は平凡だし、目立つボールもない。ただ、見た目よりもボールが伸びたり、動いたりするのが大貫の持ち味。背中側に少し入るフォームも、打者との間合いを外す武器になる。パワーアップを欲張らなければ、先発の谷間でいい仕事をしてくれるだろう。

明治安田生命のプリンスはもう1本が出ず


 ヤクルト8位の吉田大成(明治安田生命)は、1回戦の日本生命戦に1番・遊撃で出場し、3打数1安打。初回にセンター前ヒットで出塁したが、1対1で迎えた8回表1死二塁のチャンスにライトフライで勝ち越せなかった。この打席を吉田は悔やんでいた。

「ピッチャーが変則左腕の清水翔太さんに代わって、データがなかったんです。東京で言ったら氏家優悟さん(セガサミー)のイメージで真っすぐを待っていたんですけど、思った以上に軟投派でした」

 1-1からのスライダーに泳いでしまってのライトフライ。合わせにいくカウントではなかっただけに、もったいなかった。しかし吉田はこの1年間で「ストレートを打つこと」にこだわり、支配下での最後の指名(全体で83番目)を勝ち取っている。

「強いストレートを打てないとプロにいけないと思っていたので、都市対抗予選で負けてからはストレートを打つことを意識してきました。それが秋の企業大会の首位打者にもつながりました。変化球を拾うのは得意なので、ストレートに負けないスイングをこれからも心がけていきます」

 明治安田生命の成島広男監督は「守備はプロで通用する。打つ方も、プロでいい指導者に巡り合えば、マスターできるでしょう」と、吉田の伸びしろに期待している。今シーズンはチーム事情で二塁に回った時期もあったが、やはり遊撃がよく似合う。守備固めからチャンスをつかみ、もったいない打席を減らしていけたら、活躍の場がさらに広がる。

ドラ1との対戦で燃えた男


 今大会で最も注目を集めたのが、阪神のドラフト1位・近本光司(大阪ガス)だった。地元・大阪での開催とあって、関西のテレビ局が大挙するなど、連日多くの報道陣に取り囲まれていた。

 近本らしさが出たのが、2回戦のHonda鈴鹿戦の第2打席。4番の土井翔平のソロ本塁打が出た直後に、初球からセーフティーバントを決めている。一発を浴びた平尾奎太の動揺を見逃さず、左投手の投げにくい三塁側に転がすあたりが心憎い。塁に出たら即盗塁でかき回すのも、近本の持ち味。捕手の送球が逸れて、近本の頭に当たった時はヒヤリとしたが、盗塁成功で、そのまま元気にプレーを続けていた。何かとケガが怖いプレースタイルゆえに、プロでもケガなくシーズンを乗り切ることを願うしかない。

 近本へのライバル意識を前面に出していたのが、瀧中瞭太(Honda鈴鹿)だった。「向こうはドラ1。こっちは指名漏れ。絶対に打たれたくなかった」と、近本を2打数ノーヒットに抑えた。

 この日の瀧中はストレートが特によく、同点の8回裏からマウンドに上がって、タイブレークを含む5回を無失点。「リリーフだから1球の質を高めて、全球勝負球のつもりで投げました」との言葉通り、隙のない投球だった。力強いストレートに、137キロぐらいのカットボールを混ぜるから、右打者はタイミングを外される。従来の「瀧中は真っすぐとフォーク」のイメージを変えるような組み立てだった。ドラフト前にこういう投球をしていれば、指名があったかもしれない……。

 日本選手権はドラフト後なので、近年は指名選手の「お披露目の場」になっている。それよりも、ドラフト直前の「最後のアピールの場」になった方が、選手にとってプラスではないだろうか。もちろん、ドラフト候補のためだけに社会人野球がある訳ではない。それでも、アピールの場は多いに越したことはない。

取材・文=久保弘毅(くぼ・ひろき)

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