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シーズン終盤の風物詩? 今年もあったタイトル狙いの敬遠攻め

 両リーグとも優勝チームが決定し、レギュラーシーズンも終了。もちろん、両リーグのタイトル獲得者も確定した。

 西武の143試合目にメヒアが34号本塁打で一歩先に出たかと思えば、144試合目に中村剛也が34号を放って、2人そろって本塁打王に輝いたり、パ・リーグ全体で最終戦となった10月7日の楽天vsオリックスでは則本昂大(楽天)が10奪三振を奪い、金子千尋(オリックス)を抜いて、最多三振奪取投手のタイトルを獲得したり、最後まで白熱したタイトル争いだった。そんな中、大きな反響を呼んだのが10月4日、楽天vsオリックスでの銀次(楽天)に対する5打席連続四球だ。打率.331でトップの糸井嘉男(オリックス)を5厘差で追う銀次はプロ初の1番に座るも、オリックス投手陣から5打席全て敬遠気味の四球を受けた。過去にもあった醜いタイトル争いと同じように、スタンドからは大ブーイングが沸き起こったという。

オリックスだけを責めるのは筋違い?


 今季、長らく打率トップをキープしていた糸井。だが、9月20日に糸井の打率.32188に対して、銀次は打率.32183と、その差わずか5糸差にまで追い上げた。翌21日に銀次が4打数4安打の固め打ちで逆転し、ついにリーグトップに躍り出た。

 しかし、23日から28日までの6試合を、銀次は右ヒザ痛を理由に欠場。その間、27日に打率.330に乗せた糸井が再び首位打者を奪還すると、銀次は29日に復帰。翌30日に猛打賞を記録して打率.3289とし、2毛差だけ糸井を上回った。

 糸井も負けていない。10月2日、優勝が決まる大一番のソフトバンク戦で3打数2安打。打率.331として再びトップに返り咲いた。そして、チームの2位が確定したこともあり、4日の直接対決では糸井が欠場。銀次は勝負を避けられた。残り2試合でヒットを打ち続ければ、というわずかながら逆転の可能性はあったが、7打数3安打の微増で終戦。首位打者のタイトルは糸井が獲得した。

 「正々堂々と勝負しろ」と、オリックス投手陣を批判する声も多い。しかし前述のとおり、打率トップに立った銀次は、理由はあるにせよ6試合を欠場。一方の糸井は、優勝争いの真っ只中で、脇腹や左ヒザなど傷ついた満身創痍の体にムチをうって出場を続けた。ネット上では、糸井の方こそ真の首位打者に相応しいという声もある。



24球全部ボールの落合


 ちなみに、この試合で銀次が記録した1試合5四球は、パ・リーグタイ記録。2003年5月3日の対日本ハム戦で記録した中村紀洋(当時近鉄/現DeNA)以来、5人目の記録となった。また、1試合最多四球の日本記録は、1991年10月13日の対ヤクルト戦で記録した落合博満(当時中日)の6四球だ。

 実はこの記録もまた、タイトル争いの副産物といえる。この時も首位打者争いだった。その試合前日、10月12日まで古田敦也(当時ヤクルト)は打率.339、落合は.335とわずか4厘差。しかし、ヤクルトベンチは古田を出場させず、ライバルの落合とは勝負をしない作戦に出る。記録上の1敬遠を含めて合計24球全てボールという徹底ぶりで、こうして1試合最多四球の日本プロ野球記録が誕生したのだった。試合は中日が10−0で大勝。この試合終了時、ヤクルトファンは何を想っていたのだろうか。ちなみに、この後の試合で落合は6打数5安打を記録し、古田の打率を上回ってシーズンを終了するも、試合が残っていた古田は1打数1安打で再逆転し、史上2人目の捕手で首位打者に輝いた。

 数試合をまたいで記録される連続打席四球記録は、1984年に掛布雅之(当時阪神)と宇野勝(当時中日)の本塁打王争いによる10打席連続四球や、1988年の阪急vsロッテ3連戦での、高沢秀昭(当時ロッテ)と首位打者を争った松永浩美(当時阪急)の11打席連続四球がある。

 高沢に首位打者を獲らせたいロッテベンチは、第1戦目の第3打席から松永との勝負を避ける。ダブルヘッダーで行われた翌日の2試合とも全て敬遠指示を与え、44球全てボールで11打席連続四球記録の日本記録が誕生した。怒り狂った松永は、明らかなボール球を3度空振り。わざと三振をして、シーズン最終打席を終えたのだった。


(2014年10月8日/スポニチ・アネックス配信)

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