「WBCの影響って、僕はないと思ってるんです」
司会者から「WBC後遺症」について問われると、里崎氏はキッパリと気持ちよく「ない」と返した。
「WBCがあろうがなかろうが、開幕の段階で調子の上がらないタイトルホルダーなんて、いっぱいいるんです。調整期間云々の議論もありますけど、今回はWBCが終わって、帰国してから開幕日まで1週間ありました。自分のときなんて、水曜に帰国して、翌日の朝イチで福岡に飛んで、午前練習から参加。金曜日に開幕を迎えたんです。(当時ロッテ監督の)ボビー(・バレンタイン)からは、次の週からの参加でいいとは言われていて、(WBCに参加した)投手陣は福岡には行かなかったんですけど、僕の心のなかでは、『そんなのはありえない』と開幕からベンチに入ったんです」
まったく調整期間のないまま開幕を迎えた2006年の里崎は、シーズン終了後、自身初のベストナインを獲得する充実のシーズンを過ごした。
「WBCがあろうがなかろうが、出てくる選手は出てきます。WBCのせいにしても解決策は出てこないですから。強いていえば、中田翔(日本ハム)や武田翔太(ソフトバンク)のように、故障してしまったら、それはWBCの影響、と言えるかもしれません。でも、調子の波に関しては影響うんぬんを言ってもしょうがない。終わってみたら、そこそこの成績を残していると思いますし、『影響があった』と言っても代替案はないわけで、あまり建設的な議論にはならないですよね」
WBC組の調子について語るならば、もっと違う視点がある、と里崎氏は続ける。
「むしろ語るべきは、WBCでレギュラーではなかった選手。内川(聖一/ソフトバンク)、鈴木誠也(広島)、平田(良介/中日)。ピッチャーでも藤浪(晋太郎/阪神)、則本(昂大/楽天)、松井(裕樹/楽天)といったバックアップメンバーは、試合の感覚もないですし、いつもの調整ができずに開幕を迎えたわけです。でも、そういう選手たちが結果を出しているんですよ。頭が下がりますよね」
世間で交わされているお決まりの議論に一石を投じるのが里崎スタイル。毎年、パ・リーグ勢がセ・リーグを圧倒する交流戦についても、今季は違う見立てをしているという。
「今年はパ・リーグでも、ロッテ、日本ハムともここまで苦戦していますし、ひょっとして(交流戦の)勢力図が変わる可能性もありますね」
そもそも、毎年のように交流戦でパ・リーグ勢が優位に立つのには理由がある、と語る里崎氏。普段の北海道・福岡遠征がなくなり、新幹線移動だけになるのもひとつの要因。そして、最大の要因は何と言っても「DH制」だ。
「パ・リーグはDHありきのチーム編成。一方のセ・リーグは、DHに代打の一番手を起用したりしますよね。それだと、戦力の厚みが少ないんです。でも今年、巨人なんて、阿部(慎之助)、村田(修一)、マギーの3人を併用してますから、ひとり余っている状態。そこを交流戦でDHとして使えれば戦力に厚みが出ます。広島も、今は新井(貴浩)とエルドレッドを併用していますが、DHでは一緒に使えますから。今年に限っていえば、交流戦におけるセ・リーグのマイナス面がプラスに変わって、おもしろいことになるんじゃないかな、という予感はありますね」
ほかにも、今季のセ・リーグには交流戦を迎えるにあたって明るい材料が多いという。
「菅野(智之)の3試合連続完封! 僕は3試合のうち2試合見ましたけど、コントロールがすごい。特にアウトコースへのカットボール! 広島にしても、(昨季沢村賞の)ジョンソンがいない中でこの順位。戻ってくれば同然上積みになりますし、DeNAにしても筒香(嘉智)がこれから爆発するかもしれないですよ」
解説者・里崎氏の見立ては果たして当たるのか?
「まだ1カ月終わったばっかりですよ! 交流戦もあるし、まだまだどうなるかわかりませんって」
そう語る里崎解説の続きは、FM93・AM1242ニッポン放送「ショウアップナイター」で。
文=オグマナオト