平野が侍ジャパンで最後に投げたのは2012年3月。台湾代表と戦った東日本大震災復興支援ベースボールマッチでのことだ。以来、日本代表とは縁がなかったが、今回、土壇場でのサプライズ選出となった。
平野は侍ジャパンが抱える「抑え」という課題を解決にみちびく最適な投手だ。思い返せば、WBC三連覇を逃した第3回大会では継投が上手くいかず、準決勝のプエルトリコ戦で涙を飲んだ。2015年のプレミア12、そして昨秋のメキシコ、オランダとの強化試合でも、リリーフ投手に不安を残した。
弱点を補う戦力として、平野に白羽の矢が立ったというわけだ。
当世を代表するリリーフのスペシャリスト・平野は、「三種の神器」ともいうべき3つの武器で日本代表に貢献する。
第一の武器は「確かな実績」だ。通算491試合の登板で、救援での起用は423試合。積み重ねたホールドは131、セーブは127を数える。ほかに「100ホールド&100セーブ」を同時達成している現役投手は、岩瀬仁紀(中日)、藤川球児(阪神)のみだ。
昨季は3年ぶりに防御率1点台(1.92)を記録。試合終盤の豊富な経験は、侍ジャパンへの大きな力になる。
「外国人打者にめっぽう強い!」、これぞ第二の武器だ。150キロを超えるファストボールは、パワーのある助っ人も容易に打ち返すことができない威力。落差の大きいフォークボールは、大男をきりきり舞いさせる十分なマネーピッチだ。
高低を生かしたパワーピッチ・スタイルで、この2年間も欧米系の外国人打者をねじ伏せてきた。53打席で欧米系選手と対戦し、その成績は48打数で9被安打、16奪三振、4与四球、1与死球。被打率は.188だ。抑えで起用される投手の「ご法度」が被弾を含む長打を浴びることだとすると、二塁打は2本、本塁打は1本しか打たれていない。その点も、心強いかぎりだ。
そして第三の武器は「盗塁を許さない投球技術」。これが白眉ともいえる素晴らしさを誇る。WBC第1回大会で侍ジャパン正捕手だった里崎智也氏も、自著『非常識のすすめ』で評価するように、平野は1.1秒以内の高速クイックの持ち主なのだ。
この特技を生かしながら、2012年以降、294回2/3を投げながら、走者に許した盗塁企図数をたったの9回にとどめた。とくに79回2/3を投げた2012年はゼロ! 61回を投げた昨季も、許した企図数はわずかに2回。1点を争う緊迫した状況で、たとえ出塁を許しても塁上に走者を釘づけにするはずだ。
小久保監督は、松井裕樹(楽天)とともに抑えでの起用を表明している。平野はこれら「三種の神器」を携え、侍ジャパンの勝利を確実にする好投をみせてくれるはず。大いに期待したい。
文=柴川友次
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