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なぜ守備に不安の高山俊(阪神)がセンターに。外野陣のシャッフルからセンターラインの将来像が見えた

なぜ守備に不安の高山俊(阪神)がセンターに。外野陣のシャッフルからセンターラインの将来像が見えた

 ペナントレース中に外野の布陣が「1度にシャッフル」され、それぞれのポジションが変わったことは、これまであまり記憶がない。

 その異例ともいえるシャッフルが行われたのは、6月6日の阪神対オリックスでのこと。阪神のスタメン発表の際に「1番、ライト糸井」、「3番、センター高山」、「4番、レフト福留」とコールされ、スタンドのファンを驚かせた。

 これはただのシャッフルではない。阪神のチーム方針が大きく動いたことを示すものだ、と筆者は睨んでいる。

 なぜ、この時期のシャッフルしたのだろうか?

 阪神は開幕から広島に肉薄し、一時は首位に立った。その原動力は、FA加入の糸井嘉男、最年長の福留孝介、復活した鳥谷敬のベテラントリオによるところが大きい。

 しかし、交流戦に入り、糸井は左太もも裏を痛め、万全の状態ではない。福留も疲労からか調子は下降気味だ。

 そこで首脳陣は、ここぞとばかりに外野陣のシャッフルに動いた。

 ただの一過性のものではない今回のシャッフル。将来を見据えた阪神のチーム方針をセンターラインの構築という観点から迫る。

守備力に不安要素を残す高山をあえて中堅起用


 今回のシャッフルで注目したいのは、中堅に高山俊を配置したことだ。

 中堅といえば、外野の要。守備隊形のセンターラインを担う重要なポジションだ。

 ここに、あえて守備に不安要素を持つ高山を配置した。この采配は苦渋の決断というより、将来の伸びしろに期待した感が強い。

 2年目のジンクスなのか、今シーズンの高山は持ち前の打撃で好不調の波が大きい。糸井、福留がここにきて不調気味のため3番に起用されているものの、まだまだ絶対的な信頼を得てのクリーンアップではない。

 また、中堅の守備力だけを見れば、中谷将大が上だ。

 高山の中堅起用は、「高山こそ将来の主軸となる選手」と首脳陣が認めたと解することもできる。


経験のない糸原をあえて遊撃で起用


 期待の高さの現れでは、センターラインを担う内野の要・遊撃手に糸原健斗を積極的に起用している采配にも見受けられる。ここにも先を見たチーム編成の意図を感じる。

 アマチュア時代の糸原には遊撃手の経験がほとんどない。しかし、糸原をあえて難しい遊撃手で起用し、リスクを犯してまで1軍の実戦で鍛錬を積ませている。首脳陣のセンターライン構築への本気度を感じるのだ。

 将来的には、遊撃手を争う糸原と北條史也を天秤にかけ、片方を二塁手もしくは三塁手にコンバートし、鉄壁な内野を作る意図も含んでいるのだろう。

強肩で正捕手の座をつかもうとしている梅野


 また、センターラインにおける重要な扇の要・捕手は、梅野隆太郎が開幕からほぼレギュラーの座をキープしている。

 打撃は打率.181と期待に応えているとはお世辞にも言えないが、リードで味方投手を盛り立て、盗塁阻止率はリーグトップ。守備面での首脳陣からの信頼感は厚みを増している。

 オールスターゲームの中間発表では、セ・リーグの捕手部門でファン投票数が20万票を突破。小林誠司(巨人)をかわし、現時点でトップを走っている(6月14現在)。

 開幕から調子が上がらないとはいえ、WBCで大活躍をみせた小林に勝る投票数からは、強肩で投手をアシストする梅野への期待の高さが伺える。


優勝争いをしながらの若手の育成


 あらためて言うまでもなく、センターラインがしっかりしているチームは強い。広島はその典型で、中堅・丸佳浩、二塁・菊池涼、遊撃・田中広輔、そして捕手は會沢翼と石原慶幸の併用だが、メンバーが固っている。

 広島には及ばないものの、阪神も将来を見据えたセンターラインの布陣で徐々に態勢を整えつつある。

「優勝争いをしながらの若手選手の育成」

 人気球団ゆえに勝つことが至上命題のなか、阪神はいまもっとも難しい課題に挑戦しようとしている。


 文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。

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