49の地方大会の先陣を切った沖縄大会は、1回戦が順調に進んでいる。
6月23、24日には興南高、美里工高、美来工科高といったシード校が登場し、興南高は9対2(7回コールド)、美里工高は7対1、美来工科高は7対0(7回コールド)と危なげなく勝ち上がった。
春季沖縄県大会優勝校で第1シードの沖縄尚学高は、7月1日に登場予定。好投手・岡留英貴(3年)と河野哲平(3年)に、スラッガーの砂川リチャード(3年)を擁するが、対戦相手は昨秋のベスト4・那覇高だけに油断は禁物。春優勝の勢いを持続して、うまくスタートを切ることができるか。
6月24日には南北海道大会も開幕。函館、室蘭の各支部予選1回戦が行われた。
函館支部では、北海道で過去最多となる5校による連合チーム「松前高・長万部高・福島商高・大野農高・森高」が登場し、8対7で奥尻高に競り勝った。
連合チームは、少子化の影響により、単独チームが組めなくなった学校への救済措置として始まったものだ。今では連合チームは珍しくなくなったが、5校となると、また話は別。
これまで5校の連合チームでは、東東京の「足立東高・桐ヶ丘高・京北高・京北学園白山高・三宅高」、大阪の「和泉総合高・北淀高・西淀川高・住吉商高・工芸高」が、いずれも初戦敗退。2015年に大阪の「北淀高・能勢高・工芸高・茨田高・西淀川高」が初戦をコールド勝ちし、「5校連合の初勝利」と話題を呼んだ。
練習にも苦労を強いられる連合チームだけに、今回の南北海道の連合チームの勝利は立派なものだ。
茨城大会には、4校の連合チーム「友部高・神栖高・潮来高・石岡商高」が出場。組み合わせ抽選会で、なんと7月8日の開幕試合を引き当てた。
ちなみに春季茨城大会では「友部高・茨城東高・神栖高・潮来高」の連合で出場するも初戦敗退。南北海道に続いて殊勲の1勝を挙げたい。
秋田大会に臨む二ツ井高は、連合チームとは異なる救済措置「単独廃校ルール」を選んだ。秋田では初の選手権大会での適用となる。
この「単独廃校ルール」は、「部員不足の学校が近隣の他校から選手を補充して大会に出場できるようにする救済措置。試合に出場できる部員が5人以上9人未満の場合、10人になるまで選手を借りることができる」というもの。
新1年生が入部せず部員が7人となった二ツ井高は、能代松陽高の1年生3人を加えた10人で夏を戦うこととなった。
なお、2015年秋の福井県大会では、部員5人の丹南高が鯖江高から部員を借りて大会に挑んでいる。
センバツでは大阪桐蔭高と履正社高が決勝戦を戦い、春季近畿大会ではベスト4の3枠を牛耳るなど、層の厚さを見せつける大阪勢。注目の組み合わせ抽選会が行われた。
まずは3回戦までの組み合わせが決まった段階だが、公式戦16連勝中の大阪桐蔭高は7月13日(大手前高と対戦)、履正社高は14日(常翔啓光学園高と対戦)が初戦と決まった。
また、春季近畿大会で大阪桐蔭高に0対18で大敗した悔しさを晴らしたい東海大仰星高と、プロ注目の投手・宮本大勢(3年)を擁する大体大浪商高は、ともに15日に登場する。
大阪桐蔭高3年ぶりの甲子園出場なるか。それとも他校が阻むのか。激戦必死の大阪大会は7月8日にスタート。
京都大会は、2年連続出場を目指す京都翔英高と、春季京都府大会優勝の龍谷大平安高が2強。
龍谷大平安高は、甲子園春夏通算100勝にあと1勝(夏:59勝、春:40勝)とリーチをかけているだけに、なんとしても京都大会で優勝し、甲子園出場にこぎつけたいところだろう。
昨年のセンバツでバックスクリーンに本塁打を放った左の大砲・岡田悠希(3年)と、ミート力とパワーを兼ね備えた打撃が売りの右の大砲・松田憲之朗(2年)のコンビが火を噴けば、聖地にグッと近づくはず。
甲子園に出場した暁には、通算100勝を達成して、2014年のセンバツ以来の「優勝」も果たしたいところだ。
ちなみに通算100勝は中京大中京高のみが達成している大記録だ。
今年のセンバツに21世紀枠で出場した不来方高(岩手)は、10人だった部員が17人に増加。心機一転、夏の甲子園を目指す。
センバツ後の春季大会は、右ヒジの違和感で戦列を離れたエースの小比類巻圭汰の不在が響いて、盛岡地区予選敗退。岩手県大会への出場を逃した。
小比類が復調したこの夏は、昨秋の快進撃を思い出して暴れてほしい。
初戦の相手は、昨夏ベスト4の一関工高に決まった。いきなり強豪と対戦することになったが、打撃重視の練習で培った攻撃力を武器に、岩手大会を制しての甲子園出場を目指す。
連合チームに単独廃校ルールと、試合のできる環境作りだけでも大変に思えてくる現在の高校野球事情。
しかし、他校の選手と同じチームで試合をするというのは、なかなかできない貴重な経験だ。きっと社会に出て役に立つことだろう。
渦中にいる選手は逆境と感じることもあるだろうが、前向きな気持ちで取り組み、高校野球を楽しんでほしい。
文=森田真悟(もりた・しんご)