球団創設1年目秋の高校生ドラフト4巡目で入団したプロ11年目の28歳。同期入団の銀次が天才だと認める左打者だ。ファンタスティックな逆方向へのパンチ力を武器に、星野仙一監督時代に頭角を現した。規定打席到達の経験はないが、短期間での爆発力はコンスタントに安打量産する銀次を上回る。2013年には311打席で打率.272、8本塁打、47打点、密度の濃い槍働きで日本一に貢献。しかし、ここ2年間はケガなどで出場機会を減らしていた。
2年ぶりに開幕1軍入りした今季は心機一転、左の代打としての活躍が続く。5月16日現在の成績は、16試合20打席で打率.313、出塁率.450、3打点。
代打に限定すれば、14打席10打数5安打3打点、3三振、3四球、1死球、打率.500、出塁率.643と驚きの数字だ。代打10打席以上では、西武・上本達之、ロッテ・井口資仁などを抑えてパ・リーグ代打打率1位に立つ。
その14打席の状況が梨田昌孝監督の高い信頼度を表しているようで、興味深い。全て走者ありなのだ。2点差以内の接戦は11打席を数える。試合の趨勢が決まった走者なしでのお茶濁しのような起用は一度もない。まさに「代打の切り札」としてシビれるシーンに投入され、期待に応える結果を残しているのだ。同じ左打ちの代打要員には後藤光尊も控える楽天。しかし、ベテランの起用が3回に止まることを見ると、枡田の存在感がチームで大きくなっていることがうかがえる。
幾つか戦歴を御紹介しよう。今季の初打席も代打だ。負けなしバンデンハーク相手に持ち味の選球眼を発揮し、チームを救った。3月26日のソフトバンク戦。終盤8回に2点を追う展開。1死一塁から走者を得点圏に送り、銀次の2点同点打を呼び込む四球を選んでいる。壮絶な点取り合戦になった5月15日のロッテ戦。3点を追いかけた8回。島内宏明の2点三塁打で1点差に迫るとなおも2死三塁。ここで梨田監督に勝負札として使われた。火消しに出てきた益田直也とのマスダ対決を制した一撃は、土壇場で試合を振り出す同点打になった。
代打2ケタ安打まで残り5本となった。楽天では憲史以来「代打の神様」の椅子は空いたままだったが、メドがついたと言えそう。酸いも甘いも噛み分けた最古参の生え抜き野手が、チームの苦境を救うべく一撃入魂の活躍を見せる。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)
信州在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える、楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴、現在地を定点観測するブログを2009年から運営の傍ら、有料メルマガやネットメディアにも寄稿。