ペレスの特徴はなんといっても、あの極端すぎるオープン・スタンスだ。僕らの度肝を抜くには十分すぎた。
引いた右足は今にもバッターボックスから飛び出さんばかり。寝かせたバットのヘッドをマウンドへ向けてグルグル回しながら小刻みにリズムを取ると、口元にはしばしば白いガム風船を膨らませる演出。独特すぎる打席での一挙手一投足に、多くの野球好きがノックアウトをくらったはずだ。
そのデビュー戦も鮮烈すぎた。7月12日の西武戦。3番・左翼で初出場し、まわってきた来日初打席のこと。ポーリーノ(西武)の148キロのストレートがアウトコースに流れたところをファースト・スイング。
外国人選手には珍しく、しっかり右足を上げて放った球団史上初の来日初打席初本塁打は、完璧すぎる放物線で左中間スタンドへ。この当たりがゲームを決める決勝2ランになり、初のヒーローインタビューとなった。
初物尽くしから一夜明けた翌日も1ホーマー含む2安打2打点の活躍を見せたペレスは、打撃スタイルだけではなく、その活躍劇も記憶に残るものが多かった。
ロケットスタートを飾ったデビューから2カ月後、今度は球団史上初の「初回先頭からの2者連続ホームラン」を演出する。2番・DHで出場した9月11日の日本ハム戦。1番・岡島豪郎との連弾で加藤貴之(日本ハム)を攻略してみせた。
1週間後の西武戦では1試合5打点の槍働き。高橋光成(西武)から放った3ランを含む3安打でチームを勝利に導いた。ちなみに今季、1試合5打点以上を記録した楽天の打者はペレスだけである。
ペレスの破天荒な打撃スタイルは逆に弱点をも露呈させてしまったのかもしれない。苦手のインコースを次第に徹底して攻められるようになった。筆者調べでは、ペレスを打席に迎えて相手捕手が内角にミットを構えたのは、全401球の実に173球、43%にも及んでいる。
24試合93打席で残した成績は、打率.239、15打点、5本塁打。三振も29個と多く、数字だけみれば、確かに物足りない。
しかし、ヒーローインタビューの回数は楽天外国人選手最多の4回を記録。お立ち台では日本語で「トウホク、アキラメナイ!」と力強い宣言をするなど、ファンの脳裏に強烈なメモリーを刻み込んだ。これは誰が何といおうと、間違いない事実だ。
文=柴川友次
NHK大河「真田丸」で盛り上がった信州上田に在住。真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴を定点観測するブログや有料メルマガ、noteを運営の傍ら、ネットメディアにも寄稿。