2011年ドラフト会議。日本ハムの7位指名に会場がどよめいた。
「大嶋匠 捕手 早稲田大学ソフトボール部」―――。
その年の春から社会人野球セガサミーの練習に参加し、日本ハムの入団テストも受けたとはいえ、ソフトボール選手の指名はあまりにも異例だった。
ルーキーシーズン、春季キャンプの紅白戦では初打席本塁打を記録したものの、開幕してから1軍昇格はなく、イースタン・リーグで60試合、打率.199、3本塁打に終わった。
一般的にフライを多く打つ打者の方が長打を打つ確率が高いと言われ、ゴロとフライの比率が1.00を下回れば下回るほど、長打力があると考えられる。
昨季、イースタン・リーグでの大嶋の凡打を振り返ると内野ゴロ59、内野フライ10、外野フライ18。ゴロとフライの比率は2.11と圧倒的にゴロが多かった。
しかし今季は、イースタン・リーグで内野ゴロ15、内野フライ3、外野フライ11。ゴロとフライの比率は1.07とフライを打つ確率が増えている。端的に言えば、今季は打球が上がるようになったのだ。
また、昨季は2本しかなかったライトフライが、今季はすでに3本。数字の面では、より強く、引っ張った打球を打てていることが推測できる。
4月8日に大嶋は再び1軍登録され、10日の楽天戦では7番指名打者でスタメン出場を果たした。サードフライ、ファーストフライ、サードゴロでプロ初ヒットはならなかったが、打球が上がるようになった大嶋がソフトボール出身選手初のヒットを打つ日はそう遠くないはずだ。
質量ともに豊富な戦力で3年連続日本一を目指しているソフトバンク。育成枠の選手を多く抱えながらも、3軍制を敷くことで実戦の機会も多く与え、若い力を伸ばすことも怠らない。
しかし、他球団での支配下登録を目指し、ソフトバンクとの育成契約延長を選択しない選手もいる。2011年の育成ドラフト2位でソフトバンクに入団した亀澤恭平は、14年オフに中日と支配下契約を結んだ。翌15年、開幕1軍入りを果たし、106試合、打率.269とチャンスをものにした。
亀澤に触発されたのか、昨オフには白根尚貴が12球団合同トライアウトを経てDeNAと支配下契約を結んだ。9日現在、イースタン・リーグで21試合に出場し、79打数31安打2本塁打、リーグ2位の打率.392を記録している。1軍野手陣の調子があがってこないこともあり、初の1軍昇格なるか注目だ。
8日のイースタン・リーグ巨人戦で内海哲也に対し、第1打席は外角に落ちるチェンジアップに空振り三振。第2打席はインコースへの速球が続き詰まったサードゴロ。第3打席はカーブ2球で追い込まれ、外角に落ちるチェンジアップに空振り三振。エクトル・メンドーサと対した第4打席は外寄りの速球をとらえ、強い当たりのセンターライナーに終わった。
9日の巨人戦では長谷川潤に対し2打数1安打。育成枠の田中太一に対しセンターフライ。長谷川から打ったセンター前ヒットは外角のスライダーをとらえた当たりだった。
2試合を見たに過ぎないが、内角にもろさがあり、とらえた当たりはいずれも外角の球だった。内海のクロスファイアに思わず足を引いてしまう場面もあり、1軍レベルの球に対応できているとは言い難い。イースタンで高打率を残しているとはいえ、もう少し2軍でもまれる必要がありそうだ。
文=京都純典(みやこ・すみのり)
1977年、愛知県出身。出版社を経て独立。主に野球のデータに関する取材・執筆を進めている。『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)、『野球太郎』(廣済堂)などに寄稿。1軍はもちろん、2軍の成績もチェックし、分析している。