大方の予想通り、という表現が適切だろうか。陽岱鋼(日本ハム)がFA宣言をした。陽は会見で「来年の構想に自分の名前がなかった。自分のため家族のためにFAを悩みに悩んで決断した」という趣旨の発言をしている。
この発言にある「構想外」が真実かは不明だ。だが、日本ハムの編成を預かる吉村浩GMなら「1軍主力メンバーの陽を戦力構想に入れない」という考えがあったのかもとうなずける。陽の流出に備え「ポスト」を3年前から準備していたからだ。
FA宣言をした陽の代役を務めるのは岡大海(2013年ドラフト3位)、淺間大基(2014年ドラフト3位)そして、先日、巨人からのトレードが発表された大田泰示だろう。
陽がFA権を獲得する2016年オフから逆算し、2013年のドラフトから補強、育成を行ってきた。大田泰示は巡り合わせかもしれず、また、どのタイミングからトレードを目論んでいたのかも定かではないが、結果としてポスト陽の候補となるのは間違いない。
今後、FAでの去就が注目される大物は中田翔だ。順調ならば来シーズン中に国内FA権を取得する。中田本人はメジャー志向があるとも言われているが、実際にメジャー移籍を目指しているならば、海外FA権を取得する2018年シーズン前に球団はポスティング申請を行うはずだ。
どちらにせよ、中田の去就のキーポイントが来年のオフとなるのは間違いない。吉村GMは2018年の編成を考える上で、もしかすると中田の名前を外しているのではないかと妄想する。
そこで「ポスト中田」の布石となるのがレアードとの2年契約。そして、今年のドラフトでの大卒スラッガーの森山佳佑(専修大)の指名だ。
中田が不在となれば長距離砲と一塁手が空くことになる。通常、長距離砲、そして一塁手の条件を同時に満たすためには、ドラフトで獲得する新人ではなく新外国人選手の獲得、もしくはFA選手の補強に動くだろう。
しかし、今のところ日本ハムはFA選手を獲らない戦略で編成を行っている。新外国人選手を獲得する公算が強い。
その際、2018年シーズンが4年目となるレアードがチームにいれば新外国人選手もチームに馴染みやすく、不安要素が一つ減る。そして、新外国人選手のポジションによっては、レアードを一塁にコンバートすることも可能だろう。
また、万が一、外国人選手が機能しなかった際に備えての森山獲得、という狙いもあるではないだろうか。森山は、専修大時代は主に右翼を守っていたが高校時代には投手と兼ねて一塁、外野を守っていた。一塁コンバートも可能だ。
レアードの契約延長、そして森山の獲得は中田放出への対策、というのは考えすぎだろうか。
大谷翔平の海外FA権行使は順調にいくと2021年オフとなる。しかし、ダルビッシュ有(日本ハム→レンジャーズ)や田中将大(楽天→ヤンキース)らの例を見ても、ポスティングでメジャーに挑戦することは間違いないだろう。報道では早ければ2017年オフとも言われている。
現時点で「ポスト大谷」と呼べる存在が投打ともに日本ハムにいるとは思えない。同じようにダルビッシュがポスティングを申請した2011年オフに「ポストダルビッシュ」は存在しなかった。
しかし、ダルビッシュがポスティングを申請した1年後の2012年のドラフトで、偶然か必然か大谷翔平の日本ハム入団が決まった。
もし大谷が2017年オフにポスティングを申請するならば、その1年後にも偶然か必然か、スーパースター候補が入団するのだろうか。2018年ドラフト候補を見渡してみると、大阪桐蔭高の根尾昂がいる。根尾も投打に才能を発揮する二刀流だ。
中田がFAで去り、大谷がポスティングで去る。そして、大谷の後継者として中田の高校の後輩・根尾が二刀流をこなす。そんなロマンを夢見るのは行き過ぎだろうか。野球ファンの妄想は尽きない。
文=勝田 聡(かつた さとし)