セ・リーグは昨季王者の広島が圧倒的な開幕ダッシュを決めた。開幕戦こそ阪神に敗れたが、そこから引き分けを挟み10連勝。2度の4連敗が響いて、一時は阪神に交わされたが、交流戦前に再び首位に立った。昨年の貯金6を上回る貯金10で交流戦に突入。リーグ連覇へ向けて緒方孝市監督の采配が冴え渡っている。
前評判とは裏腹の結果で、明暗を分けたのが伝統の2球団・阪神と巨人だ。
前評判がさほど高くなかった阪神は糸井嘉男、福留孝介、鳥谷敬らのベテランがチームを引っ張るなか、中谷将大、高山俊らの若手が日替わりで結果を残す好循環。広島に抜き返されたものの交流戦直前まで首位をキープした。
守備に難はあるものの打線の爆発力はリーグ屈指。金本知憲監督体制となって2年目の今シーズンは12年ぶりの優勝に手が届くかもしれない。
一方、史上初の同一シーズンに3名のFA補強を行った巨人は、そのFAで獲得した山口俊、陽岱鋼はいまだに1軍未出場。ドラフトを含め補強した戦力で結果を残しているのはマギーのみといった惨状にあえいでいる。開幕前は優勝候補に挙げる声も多かったが、借金を抱えての交流戦突入となった。
交流戦直前でBクラスに沈んでいるのはDeNA、ヤクルト、中日だ。3球団とも筒香嘉智(DeNA)、山田哲人(ヤクルト)、岡田俊哉(中日)といったWBC出場メンバーの調子が上がらず、苦戦を強いられている。
しかし、筒香は本塁打こそ少ないものの打率は底を打った様子。まだ本調子には程遠いが、夏場に向けて調子を上げ、DeNAの2年連続Aクラス入りを後押ししたい。
ヤクルトは雄平、バレンティンが当たってきている。山田が復調すれば打線が活発化しそうだ。中日はゲレーロ、ビシエドの両外国人選手の一発攻勢が強力。当たり出すと手がつけられない。接戦に持ち込み、主軸に期待といったところだろう。
パ・リーグは楽天が抜け出した。1番の茂木栄五郎が球団史上初の生え抜きによる2ケタ本塁打を放つなど絶好調。茂木からペゲーロ、ウィーラー、アマダーに続く打線は破壊力十分だ。
ただ、梨田昌孝監督はこの打順に固執しすぎることなく、休養を入れるなどコンディションを最優先し、柔軟にオーダーを組み替えている。名将の手綱さばきも光り、2013年以来の日本一へ向けて好調を維持している。
2位につけるソフトバンクは、盤石と見られた投手陣にアクシデントが発生。和田毅、武田翔太が離脱し、千賀滉大が緊急降板から先発を1週飛ばすなど悪いことが続いた。しかし、デスパイネの加入でさらに厚みを増した強力打線が奮闘。開幕からしばらくは出遅れたが、楽天をぴったりとマークしている。
西武は菊池雄星がエースの働きを見せ、新人の源田壮亮が2番・遊撃に定着。活発な打線に支えられ3位をキープしている。
昨シーズン日本一の日本ハムは10連敗、3位のロッテは8連敗を喫するなど、開幕から調子が上がらず下位に低迷。日本ハムは大谷翔平の復帰を起爆剤にしたい。ロッテは歴史的貧打と揶揄される打撃陣の発奮を期待したい。
開幕から好調をキープしていたオリックスは5月に9連敗を含む、6勝19敗と大失速。5位に転落した。長打力のあるロメロと吉田正尚の離脱が痛かった。ロメロは交流戦に入り復帰したものの、吉田正の復帰時期はまだ見えず。いち早い1軍合流が待たれる。
広島と阪神が抜け出したセ・リーグは、広島がさらに歩みを先に進めそうだ。
昨シーズンは、独走態勢に入るまではいつか失速しそうな心もとなさがあった。しかし、今シーズンは田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、鈴木誠也の上位打線にブレイク中の安部友裕が加わり、さらにエルドレッド、新井貴浩も控えている。打撃陣の層は厚い。
また、投手陣も大黒柱の黒田博樹が引退し、エースのジョンソンも不在のなかで奮闘し、首位をキープ。ジョンソンの復帰でさらなるスパートがかかる可能性は高い。
巨人は陽、山口俊のFA組が交流戦から合流予定。特に陽が加わることで、坂本勇人、阿部慎之助、マギー頼みの打線にどんな化学反応がもたらされるのか楽しみ。何かとプレッシャーがかかる巨人で、本来の実力を見せることができるかが鍵となりそうだ。
阪神は先述した主力のベテラン3人が調子を落とさずに夏場を乗り切れるかがポイント。投手陣はマテオ、ドリスら救援陣が安定しているだけに大崩れはなさそうだ。
DeNAは筒香、ヤクルトは山田が本来の力を発揮すれば台風の目になりそう。前後を打つロペス(DeNA)、雄平(ヤクルト)が好調なだけにハマれば上位進出も夢ではない。
中日は鈴木翔太、小笠原慎之介、柳裕也といった若手先発陣のブレイクで勢いをつけたい。
5月末時点で楽天が貯金18、ソフトバンクが貯金11と抜け出したが、ここにきて下位に沈んでいた日本ハムが巻き返してきた。
4月の日本ハムは6勝19敗の借金13と惨憺たる結果だったが、5月は13勝8敗で貯金5。「打者・大谷」の復帰も近いと報道されている。復帰となればチーム全体が活気づくのは明白。上位を脅かす存在となる可能性は十二分にある。昨シーズンの15連勝も成功体験として選手たちに刻まれており、あきらめない姿勢は根づいている。
2014年から3年連続Bクラスに沈んでいる西武は投手陣に掛かっている。打線は好調だけに、菊池に続くローテーションの柱がほしい。同時に、離脱者続出の先発ローテーションをどう立て直すか。
辻発彦監督は、昨年の田邊徳雄監督同様に「他にいないんだもん」と投手陣への不満を口にしている。「打線は水物」だけに、投手陣の安定がチーム力強化には必須という意味を含んでのことだろうが……。常勝・西武の黄金時代を知る辻監督の手腕に期待したい。
ロッテ、オリックスは交流戦の結果次第では、優勝争いからは早々に脱落。シーズンの目標を「3位」にシフトせざるを得ない。ロッテは外国人選手の復調、オリックスは吉田正の復帰でチーム力は上向きそうだが、果たして。
(成績は5月31日現在)
文=勝田聡(かつたさとし)