6月10日、巨人の矢野謙次と須永英輝、日本ハムの矢貫俊之と北篤の2対2の交換トレードが発表され、それぞれが新たなチームメイトと合流した。この4選手の中で、実績から矢野謙次が注目の存在だ。
矢野は、いわゆる「松坂世代」の1980年生まれ。國學院久我山高から國學院大を経て、2002年秋のドラフトで6巡目指名を受け巨人に入団し、生え抜きのG戦士として、今年で13年目のシーズンを迎えていた。
度重なるケガに悩まされながらも、そのたびに這い上がり「代打の切り札」というポジションに定着、2013年には球団記録となる代打で19安打を放つなど、勝負強い打撃が持ち味。しかし、昨年、今年と2軍では圧倒的な成績を残すも1軍ではなかなか活躍できずにいた。
陽岱鋼の故障による戦線離脱もあり、外野手が手薄になっていた日本ハムのニーズと合致しトレードが成立。栗山英樹監督は新加入の記者会見で、6月12日のDeNA戦でのスタメン起用を明言した。それほど矢野への期待を膨らませていたのだ。
そして迎えた移籍後の初戦。6番DHで先発出場した矢野は、3本の二塁打を放ち、見事、指揮官の思いに応えた。
巨人時代、代打では抜群のパフォーマンスを見せるも、スタメンで出場すると代打ほどの数字を残せていなかった。今回は「前日は緊張で眠れなかった」と試合後に話していたように、スタメンでありながら、大事な場面で起用される代打のときと同じようなプレッシャーを感じていただろう。それを今回は、うまく集中力へと転化した。そこには、幾多の修羅場を経験してきた矢野ならではのメンタル術があったに違いない。
高橋由伸や阿部慎之助といった先輩選手にも臆することなくいたずらを仕掛けるような少年らしさを持ち、ムードメーカーとしての役割も担っていた矢野。若い選手が多い日本ハムの野手の中では、中嶋聡、飯山裕志に次ぐ3番目の年長者となるだけに、かつてとは違った役割を求められるかもしれない。それでも「愛されキャラ」である矢野ならば、うまくチームに溶け込んでいくだろう。
入団記者会見では「ファイターズだけに、ファイターのようにやっていきたい」と意気込みを語り、DeNAとの3連戦で2回も上がったヒーローインタビューでは「ファイターズ最高!」と声を張り上げ、ファンからも大きな声援を浴びた矢野。1位を走る日本ハムにさらに刺激を与え、リーグ優勝に向けて新たな起爆剤になりそうだ。