球種の特徴と使い方
キビタ:今回は変化球についてのおさらいです。ここは「初歩の初歩」なので避けて通れません。
久保:打者も狙いや意図を持って打席に入りますが、基本的には来た球に対応するリアクションになります。主導権を握っているのはバッテリー。その意図がわかれば、試合の流れも見えてきます。
○真っすぐ系
キビタ:まずは真っすぐ系に分類されるストレート、ツーシーム、カットボールを説明します。
久保:大まかに分類する際には真っすぐ系、曲がる系、落ちる系の3つに分けるのが一般的です。
・ストレート
キビタ:まずはストレート。ストレートという表現をしますけど、必ずしも軌道が真っすぐだとは限りません。真っすぐのつもりで投げても、ピッチャーによっては多少ボールが動くこともあります。
久保:念のためにフォーシーム、ツーシームという言葉もおさらいしておきましょう。ボールが縦に1回転する間に、ボールを横切る縫い目が4回現れるのがフォーシーム。2回しか現れないのがツーシームです。
キビタ:フォーシームはバックスピンのかかった、きれいな真っすぐ。昔の江川卓投手(元巨人)だったり、阪神で投げていた藤川球児投手(カブス)が代表的です。
・ツーシーム、シュート
久保:近年ツーシームとシュートは、ほぼ同じような扱いを受けていますが。
キビタ:意図的に曲げて、打者の懐に食い込ませるのがシュート。真っすぐと同じ腕の振りで、握りを少しだけ変えているのがツーシームという違いがあります。どちらも打者を詰まらせる目的で使います。空振りを取るというより、バットの根本に当てさせたり、ゴロを打たせるときに使います。
久保:左打者の懐を攻められる左投手が重宝される時代ですから、左対左でシュートもしくはツーシームが使えるかどうかも、ひとつのポイントになっています。
キビタ:同じ食い込む球ですが、ツーシームの方が若干沈むイメージがあります。だから打者が「真っすぐだ!」と思って打ちに行くと、ボールの上っ面を叩いてしまいます。
久保:自打球も多くなりますか?
キビタ:そうですね。プロのレベルにもなると、きれいな真っすぐを打ち損じて自打球になることはまずありません。プロの選手が自打球になる球はほとんどが食い込む球だと判断していいと思います。
久保:シュートは西村健太朗(巨人)が投げています。ツーシームは黒田博樹投手(ヤンキース)、ヤクルトの館山昌平投手が有名ですね。ルーキーの東浜巨投手(ソフトバンク)もかなりツーシームを使っています。
・カットボール
キビタ:カットボールも真っすぐ系に入れていいでしょう。以前は、右投手が左打者の懐を攻めたくても、力のある真っすぐを厳しく突くことができず、スライダーも甘いと長打の危険があるので外一辺倒ということもありましたが、この球種の登場で左打者の懐へ思い切って攻める配球が増えました。左投手の右打者に対する攻めも同様です。
久保:カットボールの流行はひとつの分岐点だったんですね。
キビタ:マリアーノ・リベラ投手(ヤンキース)みたいに150キロを超えてギュイーンと曲がるカットボールを投げる人もいますけど、本来はボール1個、2個ぐらい曲がるぐらいの球です。日本では川上憲伸投手(中日)、石井一久投手(西武)、三浦大輔投手(DeNA)あたりが有名でしょう。
○曲がる系
・カーブ
キビタ:曲がる系のカーブはひねりを加える球です。親指で弾いて、ドライブ回転をかけるので、一度浮きあがってから沈むように見えます。
久保:縦に曲がり落ちるカーブを、昔はドロップと呼んでいました。
キビタ:カーブはあまり速くない球ですけど、以前はもっとスピードのあるカーブを投げる投手もいました。昔の佐々岡真司投手(元広島)や桑田真澄投手(元巨人ほか)が投げていたカーブですね。2人のカーブは速さがあって、ブレーキが効いていました。ひねるのが苦手な人は、ほとんどひねらずに、親指と人差し指の間から抜いて投げたりもします。
久保:いずれにしても、キレのいいカーブは打者からしたら「邪魔な球種」だと言われます。
キビタ:カーブが来ると予想していないときに投げられると、打者は面食らいます。目線が一度上がるので、あれっと思って手を出せなくなります。だからカウント球、特に初球に使われることが多いです。
久保:高校の指導者のなかには「カーブは遅いからバットに当てられる。だから決め球にはならない」という教え方をする人もいます。裏を返せば、カーブを決め球にできる人はスペシャルな存在とも言えます。またいいカーブを投げられる人はフォームが理にかなっているとも言われます。
キビタ:カーブで代表的なのは吉川光夫投手(日本ハム)。2012年はちょっとカーブが少なめだったかな? あとは岸孝之投手のカーブは回転数も多くて空振りが取れますね。ウルフ投手(日本ハム)、ホールトン投手(巨人)のパワーカーブは力勝負が挑める、外国人投手独特の球種です。リリース直後は勢いがあるので、肩口からインコースに曲げて見逃しを狙うこともあります。
久保:そのあたりは日米の差でしょうかね。