昨季の阪神のスタメンを思い返すと多くの試合で二塁を守っていたのは上本博紀だった。2016年は45試合の出場に終わった上本だが、昨季は125試合に出場し、打率.284、9本塁打、38打点をマークした。
これまでの出場試合数にはバラつきがあるが、プロ8年間で出塁率.330を切った年はなく、昨季も糸井嘉男、福留孝介に次ぐチーム3位のOPS.769(出塁率+長打率)を記録している。
昨年11月に痛めていた右足首関節を手術し、2軍キャンプスタートではあるが、実績・実力ともに上位。今年で32歳になるが、まだまだ一線級でやれる選手だ。
しかし、上本のメインポジションは二塁。これまでに遊撃で9試合、三塁で8試合に出場しているが、基本的には二塁手専門といっていい。
外野に回る手もあるが、こちらも中谷将大、高山俊らが争っている。そうなれば、いずれにしても上本はスーパーサブの位置づけになってしまう。ただ、守備の名手というわけでもないので、守備固め要員としては持ち味を発揮しづらい。
打撃面では素晴らしい活躍を見せた上本だが、オフの契約更改では1000万アップの推定年俸4300万円に留まった。右足の手術があったにせよ、かなり渋いアップ幅だ。
ちなみにスーパーサブとして74試合で打率.309を記録した俊介は、FA権取得済ということもあるが、2600万円増の推定年俸5000万円の2年契約を勝ち取った。
上本は今季、FA権取得予定だ。なんとなく、DeNAにFA移籍した大和と状況が似てきた。大和はBランクでも流出したが、上本はCランク。人的補償なしでFA移籍できる。前述した通り、昨季のOPSは鳥谷より上。阪神は上本の価値を見誤ってはいないだろうか……。
仮に大山と鳥谷のポジションが入れ替わっても、金本知憲監督の大山への惚れ込み具合から見て、二塁と三塁は埋まった状況だ。
ひっそりと糸原健斗も心配だ。昨季は打率.259、出塁率.362をマークし、勝負強さを発揮したが、遊撃の守備ではやや不安定な場面が目立ち、やはり二塁がメインの選手だと感じた。
鳥谷の二塁コンバートで歪みが生まれなければいいが……。オープン戦を経て、はたしてどうなる?
文=落合初春(おちあい・もとはる)