飛べない豚はただの豚
飛べない燕はつば九郎
今年は飛ぶよ、カモメのマーくん!
開幕から1カ月強。勝ったり負けたりを繰り返して、なかなか5割に届かない千葉ロッテマリーンズ。開幕前の順位予想では3位〜5位とする解説者が多かったが、ある意味では、その前評判通りの戦いを演じている。
そんな中、誰よりも今季のロッテ躍進、そして日本一を信じて疑わないのが球団マスコット・マーくんだ。開幕前、優勝したら空を飛ぶ、という公約を宣言したことが報じられた。
そこで鍵を握るのが今月末から始まるセ・パ交流戦だ。実はロッテ、交流戦の相性は悪くない。2005年と2006年には2年連続で交流戦優勝。2005年にはその勢いのまま、日本一も達成している。
そして交流戦といえば、忘れられないのが昨年の交流戦時期にマリーンズが仕掛けた「挑発ポスター」だ。
「あ…流れ星! 交流戦の優勝をお願いしておかなくちゃ!」
「今年のツバメはやけに低く飛ぶね。あぁ、お天気が心配だなぁ…」
「最近人気の…なんだっけ…ほら、『惨劇の巨人』!? 面白いよねぇ」
「煮てよし、焼いてよし、お刺身でもよし。鯉ってホントにおいしくって大好き!」
「マーくんとマートン、名前も似てるし仲良しだけど…今年はイジワルしちゃおっかな」
「コアラなのに竜? 竜だけどコアラ? 監督なのにキャッチャー? キャッチーだけど監督?」
というセ・リーグ6球団をあざ笑う言葉が話題を集めた。
マリーンズの挑発ポスターは2005年の交流戦スタート時から続く、初夏の風物詩でもある。だが、昨年のポスターが例年以上にインパクトがあったのは「マーくん セ界をひとっ飛び!」という冠コピーを掲げ、キービジュアルも主役はマーくんが務めたからだ。マスコットパワーによって毒のあるフレーズを一見和らげるようでいて、実はもう一歩、踏み込んだ闇の深さをも表現していた。
最近、ゆるキャラ的な側面も打ち出そうとしている各球団のマスコットたち。もちろん、“可愛らしさ”や“ゆるさ”も重要なマスコットの構成要素だ。だが、プロ野球ファンは多種多様。マスコットも、ときにはブラックで不気味で、不器用な一面だって垣間見せた方がいいはずなのだ。
その証拠に、ロッテの助っ人・クルーズの長男・ルイス君は、マーくんを見ただけで泣き出すほど恐怖と畏敬の念を抱いていることがニュースにもなっていた。子どもに支持されてナンボ、のマスコット。だが、子どもをおびえさせる要素があれば、それは相手チームへのひとつのプレッシャーにもなるはずだ。
このポスターにはもうひとつ、裏テーマがあったことを見逃してはいけない。「マーくん セ界をひとっ飛び!」というキャッチコピーにあわせて空を飛ぶマーくんビジュアル……そう、実はこれは、優勝したら空を飛びます、という公約の予行練習でもあったのだ。
昨年は、そんな予行練習むなしくシーズン4位に沈んだロッテ。だが、2005年、2010年と5年ごとに日本シリーズに進出してきた球団にとって、2015年は何かを期待したくなるシーズンであるのは間違いない。