初戦の福知山成美高戦、山口大輔はもちろん先発だったが、5回途中、8安打5四球4失点で降板。立ち上がりから変化球のコントロールが不安定で、苦しいピッチングとなってしまった。
ただ、指にかかったときの130キロ台のストレートと、タテ割れの大きなカーブのキレは昨秋からの成長を感じさせるもの。まだ本格的にピッチャーを始めてから1年未満。これからの伸びシロは十分にある。
惜しまれるのは、左対左でアウトコース一辺倒になってしまったこと。元来、インコースに投げられるタイプだけに、ホームベースを広く使って、幅のあるピッチングをしていきたい。
初戦でタイムリーを含む4本の二塁打を放ち、存在感を見せた大下誠一郎。大会後は、2年生ながら高校日本代表の一次候補に選出された。右投右打で長打が打てる外野手という点が、評価されたのであろう。
スイングスピード、インパクトの強さは2年生の中では図抜けている。アウトコースに対してしっかり踏み込み、逆方向にも飛ばせる技術を持つ。
ただ、気になるのはピッチャー方向から見て背番号がくっきり見えるぐらい、左肩を入れてトップを作るところ。一線級のピッチャーがインコースを攻めてきたときに、どこまで対応できるか。今後、インコースのさばきに注目していきたい。
甲子園37イニングで5失点。準々決勝では2点リードした7回裏からリリーフでマウンドにあがるも、3連投の疲れからか、腕が振れずに本来のピッチングができなかった山田知輝。
ただ、疲れた中でもコーナーを丁寧に突いて、試合を作れるのが強み。ピッチャーの生命線となるアウトローを主体にして、打者の近いところに緩い変化球を放り、カウントを整えられる。セオリーでは、「内に速い球、外に緩い球」となるが、山田は「内に緩い球、外に速い球」と、逆パターンの攻めも使える。抑えるコツを知っているピッチャーである。
まだ新2年生。投げ方がいいだけに、体の成長とともに、スピード、キレともに伸びていくはずだ。
甲子園4試合すべてに完投。準々決勝・龍谷大平安高戦の中盤は、腕を本来の位置よりもやや下げて投げていた田嶋大樹。それだけ疲れていたということだろう。
それでも、1、2回戦で見せた140キロを超えるストレートと、右打者の膝モト、左打者の外へ投じるスライダーのキレは「大会No.1左腕」の称号にふわさしいものだった。
ただ、レベルが上がれば打者の技術も上がり、攻めのバリエーションが求められてくる。左打者の内、右打者の外をこれからどう使っていけるか。
特に左打者への攻め方だ。外一辺倒でも、田嶋の力を持ってすればある程度は抑えられるだろう。だが、プロを見据えるのであれば、今からホームベースを広く使って抑えることに意識を向けてほしい。
ベスト4入りした豊川高のエース・田中空良は、センバツで大きく評価を上げた。準々決勝では特に体の使い方が洗練されていたし、投球も上手くなっていた。準決勝こそ炎上したが、疲労の影響もあり“参考外”と考えるべきだろう。
プロ球団のスカウトも、成長した田中の姿に驚いていた。
「今年に入り、スムーズに肩が回り、きれいに腕が使えるようになった。一時はリストから落とそうかとも思っていたけど、今はむしろ、ドラフト下位ならかかる可能性はある。スタミナはないが、横のスライダーが良い球になっていた。それを生かして中継ぎの適性もありそう」(パ・リーグ球団スカウト)。
ただし、慎重論のスカウトも少なくない。
「プロで投げている姿が想像しにくい。体も細いし、ストレートがズバンとくるわけでもない。こういうタイプの右投手はたくさんいるし、大学に進むなどワンクッション置いたほうがいい」(セ・リーグ球団スカウト)との声もある。
いずれにせよ、センバツでの快投で田中が“全国区”になったのは確か。不安定な部分を残していた昨秋を思えば、想像をはるかに超える心技体の進化だった。
「これで岸(潤一郎)もスタミナがないことがわかったでしょう」と敗戦後の佐藤洋部長。このスタミナとは単に序盤から全くボールが走らなかった「体のスタミナ」だけを指すのではない。
佐野日大戦で1つあげれば、5-5の同点、11回表2死満塁で4番・稲葉恒成を迎えたシーンである。体をオープン気味にしての明らかに内角待ち。しかも外角のカットボールを全くタイミングが合わず2度空振りしているにもかかわらず、内角のストレートで内野安打を許してしまった。これは「判断」という言葉におきかえられる「頭のスタミナ」が不足していた。
続く5番・小泉奎太にも簡単に三遊間を破られ、決定的な7点目を許したのも、いわば「心のスタミナ」不足。今大会を通じて岸には防げるミスがあまりにも多すぎた。
エースのエゴは、チームの命取りとなることは、これでさすがに理解できたはず。彼が明徳義塾高を頂点に導き、そして上を目指す気があるのならば、もう一度自分と向き合い、ガムシャラさを出して最後の夏に臨んでほしい。