6月6日(月)に開幕した全日本大学野球選手権は中京学院大の初優勝で幕を閉じた。全国各地で魅力的な選手やチームが現れるようになった昨今の大学球界において、どのチームでも頂点を狙える時代に突入した。
そんな中で今春、名門リーグの象徴である東京六大学を制し、投手陣にプロ注目選手を複数擁する明治大は優勝候補の一角として今大会に乗り込んだ。シードによる2回戦からの登場で、初戦は慣れ親しんだ神宮球場。不利な点が見当たらない条件のもと、相手は1回戦を勝ち上がってきた関西国際大との対戦となった。
明治大の先発は技術派左腕の齊藤大将(3年/桐蔭学園高)。大方の予想では柳裕也(4年/横浜高)の起用が有力視されていたが、関西国際大打線に左打者が多いことと、暑い時期による連戦を踏まえて、齊藤の起用となった。その齊藤は期待通りの投球を見せる。左打者の外角低めに、きっちりと制球されたストレートと、外に外れるスライダーを有効に使い分ける。また右打者についてもチェンジアップを軸にした組み立てで、3回まで関西国際大打線を完璧に抑え込む。4回以降は毎回のように先頭打者に出塁を許し、6回には1死一、三塁にピンチを迎えるが、牛島将太(4年/門司学園高)がスクイズを見破るファインプレーなどもあり、6イニング無失点と見事、先発の役割を果たした。
齊藤が好投を見せる一方、明治大打線は関西国際大の投手陣を打ちあぐねる。先発の門野敦也(2年/東洋大姫路高)のストレートに差し込まれ、またチェンジアップでバットの芯を外されるなど、なかなか突破口が見出せない状況が中盤まで続く。6回に2つの四球でチャンスを迎えるも、2番手で登板した前田悠暉(1年/京都外大西高)の気迫のこもった投球に前に沈黙し、好機を逸した。
一死満塁の状況から始まるタイブレーク。先攻の関西国際大は、先頭の上田哲平(4年/福井工大福井高)が柳のカーブをうまく引きつけ、レフト前の安打を放ち、試合の均衡を破る。そして宮下周平(3年/健大高崎高)の内野ゴロの間に追加点を挙げ、スコアボードに「2」の数字が灯る。2点ビハインドとなった明治大は裏の攻撃で、主砲の佐野恵太(4年/広陵高)の内野ゴロの間に1点を返すものの、その後の牛島のフェンス直撃かと思われた当たりを守備固めでレフトに起用されたばかりの藤原朋輝(2年/PL学園高)が好捕。明治大は同点に追いつけずに試合が終了。関西国際大が2対1で勝利し、明治大はまさかの初戦敗退となった。
試合後、「勝つとしたら1対0かなと思っていた」と関西国際大・鈴木英之監督。豪華投手陣から得点のチャンスはなかなか得られないと考えた一方で、明治大打線を抑え込むことにはある程度の期待を持っていたことをうかがわせた。昨年度から高山俊(阪神)、菅野剛士(日立製作所)らが卒業し、攻撃力は春季リーグ開幕前から不安視する声が周囲で挙がっていた。この試合も4回以降は無安打。大舞台でその不安要素が可視化される形となった。
また攻守両面において、球際で執念をみせる関西国際大の選手たちと比べ、明治大はやや淡白なプレーが目立った。相手が気迫を前面に押し出して襲いかかってくる構図は名門リーグ代表校の宿命でもある。地方リーグの実力が上がってきている近年、今後も全国を舞台とした戦いは激しさを増していくだろう。それをいかにはねのけていくか。明治大の秋以降に向けた再出発に注目したい。
文=長嶋英昭(ながしま・ひであき)
東京生まれ、千葉在住。小学校からの友人が、サッカーのU-18日本代表に選出されたことがキッカケで高校時代から学生スポーツにのめり込む。スポーツの現場に足を運びながら、日本各地の観光地を訪れることが最大の生きがい。現在はアマチュアカテゴリーを中心にスポーツ報道の仕事に携わっている。