先日、B-1グランプリが豊川で開催され、2日間で58万人の来場者を集め、まだまだ人気の「B級グルメ」。B-1グランプリでは回転率の高い「焼きそば」が支持される傾向があるが、全国的な広がり・認知度・普及度をみれば「ご当地カレー」こそが“B級グルメの王道”と言えるのではないだろうか。そんなご当地カレーの中でも、全国的な知名度を博しているのが「金沢カレー」。そしてこの金沢カレーと野球界には、実に密接な繋がりがある。
「金沢カレー」と聞いて多くの人が連想するのは「ゴーゴーカレー」だろう。金沢といえば星稜高校出身の「松井秀喜」。「松井秀喜」といえば「55番」。そこから命名された「ゴーゴー」の冠。
そもそもは、ゴーゴーカレー代表の宮森宏和氏が松井秀喜の大ファンで、松井が満塁打を放ったのを目の当たりにし、創業を決意したのが店名の由来だという。松井の現役時代には「松井がホームランを打てばトッピング無料」といったサービスで野球ファンを中心に知名度が向上。創業2003年12月とその歴史はまだ10年しかないにもかかわらず、全国はもとよりアメリカやブラジルなど、今や世界にもその名を轟かせている。
だが、「金沢カレー」の発祥はゴーゴーカレーではなく、むしろ金沢市内では新興の部類に入る。本当の「金沢カレー発祥の店」と言われているのが、創業昭和36年の老舗「カレーのチャンピオン」だ。そしてこの「カレーのチャンピオン」を愛して止まないプロ野球選手が、石川ミリオンスターズの木田優夫である。
「金沢カレー」の特徴は、濃厚なルーと付け合わせで盛られるシャキッとしたキャベツの千切り。そして木田優夫の好物もまた「千切りキャベツ」と「カレー」だという。つまり、好物をまとめて食すことができるのが金沢カレーなのだ。
発売中の『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』のコラムにおいて、木田優夫と金沢カレーの運命的な出会いが明かされている。本書では特定の店舗名は記されていないものの、ミリオンスターズの練習場近くにある「カレーのチャンピオン」にチームの若い衆を連れて通っていることを突き止めることができた。
「カレーのチャンピオン」はもともと、東京でフランス料理の修業を積んだ初代店主・田中吉和(故人)が、昭和35年に洋食屋を開業。当時より一番人気だったカレーライスを専門に扱うようになって今に至るという。なんだか、東京の読売ジャイアンツでプロ野球生活をはじめ、アメリカでの野球修行も経験して独自のキャリアを重ねてきた木田の生き様とも重ねることができて面白い。
千切りキャベツの他にも、ザクっとした食感が魅力の大きなカツ、昔ながらのステンレス製の皿など特徴の多い「金沢カレー」にはもうひとつ、スプーンではなくフォークで食べるというアイデンティティもある。ドジャース時代に野茂英雄に教わったというフォークを操る木田優夫との、もうひとつの類似性と言えるだろう。