【この記事の読みどころ】
・「逆転のPL」ならず。淡白な攻撃を繰り返し、準々決勝敗退
・“監督不在”のため、試合中に修正を施せず、チームとして力を発揮できなかった
・教団の本心が見えてこない……。PL学園野球部はこれからどうなるのか?
個々の選手を見れば、PLが大体大浪商を上回っていた。しかし、相手の2年生投手・西田光汰の荒れ球かつ強気の投球に押されたことに加え、“らしくない”ミスで勝機を失った。
先制点のチャンスだった4回裏、1死二塁では山本尊日出のショートライナーに二塁走者の横田強太朗が飛び出してしまいダブルプレー。直後の5回表には2死一、二塁からショート後方への小フライを主将の謝名堂陸がまさかの落球。それでも本塁に突入してきた走者を刺すには十分なタイミングの送球でリカバリーしたと思ったものの、ワンバウンドの送球を捕手・中田一真も落球。すぐに拾ってタッチしたが、間一髪およばず先制点を許した。
他にも攻守に細かなミスがあったが、これは大会を通じ感じていた部分。“7点打線”を形成し、打倒・大阪桐蔭を目指してきた。実際、5回戦までの4試合はすべて7点以上を奪って勝ってきたが、多くは力差のあるチームを相手にしてのもので、その戦いぶりにPL本来のスキのなさ、いやらしさを感じることはなかった。
試合後、謝名堂は「自分たちの野球は表現できたと思う」と涙の中で振り返ったが、涙が止まり、冷静に振り返った時、同じ言葉は出てこないはずだ。
中盤からはフライアウトも増え、攻撃も淡泊に映った。“7点打線”は決して長打を求めるのではなく、センター中心に低い打球を打ち返してきたことで成立してきた。しかし、大会を通じ5試合で6本出た本塁打の影響も少なからずあったのか、この試合では振りの大きさが目についた。このあたりの話を向けると千葉智哉コーチが言った。
「ああいう時にベンチの力が必要なんです。ベンチがどういう指示を出すか、選手に声を掛けるのか。それによって、選手がやるべきことをもう1回思い出せる。でも、ウチはそれがなかったんです。選手たちは、本当にここまで頑張ってやってきてくれたのに申し訳なくて……」
これまで千葉コーチにチームの話を向けると「今の環境の中で、どれだけのことができるか、選手にはいつもそこだけ言っています」と繰り返し、それ以上の思いは飲み込んできたが、最後にたまらず、思いがこぼれた。選手たちは、この環境の中で確かに成長し、野球を深く考えるきっかけにもなっただろう。
しかし、チームとして力を発揮するために万全の環境ではなかった。野球経験のない校長が2代に渡り、監督を兼任するという愚行。学校、教団の罪は決して軽くない。
さて、夏が終われば、この先はどうなっていくのか、という話になる。残る部員は一般試験で入ってきた11人のみ。今春に続き、来春の野球部員の募集停止もほぼ確定的とされ、「廃部」の2文字がちらつくが、一部スポーツ新聞が、現在の2年生が来夏の戦いを終えたあと、2017年の春から部員募集再開の可能性があると大会前に報じた。
また、大会中にある関係者と話したことによると、教団としては今後も3学年で220人という規模のまま、PL教の不況に役立つ人材の育成をメインに学校を運営していく方針であるようだ。そうなったとき、野球部の立ち位置がどうなるかまでの話にはならなかった。ただ、いずれも推測の話でしかない。
試合後、草野裕樹監督は記者とのやり取りの中で、現在使っている雨天練習場は間もなく取り壊されるものの、敷地内の別の場所に新たな室内練習場ができる予定、と話した。だとすれば部は存続なのか? という問いには「野球部だけでなく、他部も共用で使うような室内練習場になる予定で、(存続は)わかりません」と返すにとどめた。
ちなみに、現在使用しているグラウンドについても、教団から学校側へ返還の話が出ていると報じられている。こちらも、広い敷地内に別途グラウンドを作る計画があるようで、グラウンド返還となったとしても、イコール廃部への流れになるわけではない。さらにスコアボードや、野球部専用寮だったかつての研志寮も近々の取り壊しが予定されている。しかし、これらも老朽化のためで、野球部の存続うんぬんと絡める話題ではない。