阪神が復調の気配を見せている。巨人に6連敗を喫するなど、低調なスタートだったが、4月後半から怒涛の盛り返しでついに貯金を作った。
しかし、打線は問題を抱えている。好調の要因と希望も合わせて、阪神打線を解剖してみたい。
(成績は5月12日現在)
浮上のきっかけになったのは、何といってもルーキー・近本光司だ。開幕直後こそ鈍い出足だったが、気がつけばトップバッターに定着し、現時点では新人王級の活躍を見せている。盗塁成功率もググっと上がり、すでに11盗塁。ドラフトで藤原恭大(ロッテ)、辰己涼介(楽天)を取り損ねたような気もするが、そんなことは忘却の彼方だ。
ここ数年の課題であった「1番打者」の穴が埋まった。昨シーズン終了時は北條史也と糸原健斗の1、2番コンビで……というのが本筋だったが、それは希望的観測だった。
昨秋からこれまで阪神のドラフト戦略について不満を書き連ねたが、1番打者が埋まったならば、謝らなくてはならないだろう。
ただ、まだ不安はある。5月5日のDeNA戦で近本は背中の強い張りで6回の守備から途中交代している。翌日にはスタメンに復帰したが、疲労が溜まっていることは確かだ。阪神では「ルーキーや若手に頼りまくった結果、一転……」の不振も珍しくない。経験値の高い社会人出身の選手といえど、慎重にリフレッシュの期間を設けてほしい。
開幕低調だった2番・糸原もじわりと出塁率を稼ぎ始めた。1番・2番が今季の阪神の生命線。近本が潰れれば、ジ・エンドの可能性は高い。
編成の問題も大きい部分だが、やはり大山悠輔の4番起用は気になる。調子を上げてきていることは確かだが、それでも39試合で打率.261、6本塁打。昨年の9月のような大爆発もあり、主軸を担ってほしいという期待もあるが、これも「希望的観測」の域を出ない。
そもそも波が激しいタイプで、3番・糸井嘉男までの好循環を生かしきれるかと言われれば、現時点では微妙だ。乾坤一擲の一発が望めるぶん回しスラッガーでもないような気がする。4番の期待に応えようとしているが、本来はもっと柔軟に打てるのではないだろうか……。
若手時代の関本賢太郎もそうだった。大柄な体から未来の中軸と期待され、一時はバースの後を継ぐ背番号44を着けた。しかし、本領はしぶとい打撃だった。大山もまだ24歳で将来性は豊かだが、「4番の働き」を外部から固執されて可能性を閉ざされるのはもったいない。
「では、4番は誰が打つの?」と言われれば、渋い顔にならざるを得ないが、マルテが復帰したならば、一発だけを厳命し、シーズン前の構想通りに「4番・マルテ」でいってみるしかないだろう。一発狙いだけなら中谷将大でもいいが、相手投手によって波が激しく、未知数感はあまりない。結局、マルテに賭けるほかない。
それでも、まだ補強は間に合う。マルテの様子を指をくわえて見ているだけではないと信じたい。保険のナバーロはすでに転んでいる。ガルシアの不調で外国人枠が実質ひとつ空いているが、試すべき助っ人がいないのは残念だ。独立リーグなどの助っ人大砲候補の乱獲だって考えてもいいと思うのだが……。
5番・福留孝介もさすがに42歳で打率を落とし気味。要所で凄みは見せるのだが、クリーンアップを任せられるのは今季が限界だろう。
編成の戦略はやはり近本の結果次第になるだろう。阪神の大きな課題は3つ。1番打者、長距離打者、先発投手。先発では西勇輝が早くもエース格になり、青柳晃洋も好調、才木浩人らも奮闘している。1番が固まれば、ついにドラフトで大砲を獲れる状態になる。
いっそのこと「コイツは4番しかありえない」というような巨漢大砲を獲ってしまえば、スッキリするのではないだろうか。早くも秋のドラフトが楽しみになってきた。
文=落合初春(おちあい・もとはる)