苦難は開幕前から始まった。キャンプで12球団最多となる故障者が大量発生し、暗雲が立ち込めた。ラミレス新監督が打線の中核として2番の重責を期待していた梶谷は、腹筋の炎症でスタートダッシュを棒に振った。梶谷のお膳だてが無ければ筒香嘉智も孤軍奮闘となってしまう。また内野手の山崎憲晴、代打の切り札・後藤G武敏、投手の高崎健太郎をはじめ、次々と開幕前に戦線離脱した。
ここまでの苦戦の最大の要因は「貧打」である。現時点で井納翔一の防御率は1.47、今永は2.03。この2人だけで4勝6敗、つまりこの防御率にして6つの負けを喫していることになる。セリーグ6球団中で唯一打率.250を切ってしまった打線では投手を盛り立てることができないことは自明。
打撃不振ばかりが要因ではない。本来ならローテーションの中心となるべき山口俊や、勝ち星を計算したいモスコーソ、久保康友がピリっとせず、軒並み防御率は4点を上回っている。
ロペスと筒香の両脇を固めるべき助っ人・ロマックが「ハズレ外国人」と評されて久しい。開幕以来一度もバットは火を噴かず、挙句の果てに大事な場面での拙守で、ハマスタに響き渡るブーイングとともにファームに消えていった。
その後、フロントは事後対応に追われるも、次の候補のマット・マグブライトはあと少しのところでメジャー昇格、タイラー・ムーアはまたあと少しのところで故障者リスト入りによって獲得は実現せず。獲得期限の7月末までに救世主は現れるのか。
現在、主砲の筒香も脇腹痛により戦線離脱を余儀なくされ、主砲不在のなか、今永に念願の勝利を付けるべくチームが一つになった。梶谷復帰から関根大気も加勢し、ホームスチールなどアグレッシブな走塁が長打の欠乏する打線を鼓舞している。
何より球界全体から高い評価を集める今永の初勝利が、ベイスターズファンにとって嬉しい話題だ。勝利後の今永のコメント「今日の勝利は広島に勝ったのではなくて、過去の自分に勝つことができて勝てたんだと思います」。久々のグッとくるコメントに、さらなる期待をせずにいられない。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)