10月にプロ志望届を提出する際に、田中は「最速160キロ超え」と「シーズン200投球回数」を目標に掲げたことからも、本人は先発ローテーション入りを第一目標に定めていると考えられる。
ダイエー時代を含めた近年において、大卒1年目から好成績を残した選手の筆頭に挙がるのは、2002年に自由獲得枠で入団した和田毅(早稲田大)だ。開幕から先発ローテーションに入り、登板26試合が全て先発で14勝5敗。新人王を獲得した。
和田とともに同年、自由獲得枠で入団した新垣渚(九州共立大)も開幕から先発ローテーション入り。7月には月間MVPに選出されるなど8勝を挙げ、翌2004年から3年連続2ケタ勝利を記録した。
2003年に自由獲得枠で入団した馬原孝浩(九州共立大)。2004年は開幕から先発ローテーションの一角を任され、デビュー戦こそ勝利投手になったものの、シーズン途中に体調面、成績面ともに振るわず離脱。11試合(うち先発8試合)に登板し3勝3敗。防御率6.30と期待に応えることができなかった。
翌2005年も先発ローテーション入りしたものの結果を出せず2軍落ち。1軍復帰した6月以降はリリーフとして頭角を現し、22セーブを挙げた。当時は上記の和田、新垣に加え、杉内俊哉に斉藤和巳という強力な先発陣を形成していたため、すんなり馬原をリリーフで使うことができた。2007年には38セーブで最多セーブ投手のタイトルを獲得し、リーグを代表するクローザーに成長した。
さて、田中である。
おそらくは本人の希望もあり、キャンプでは先発ローテーションを目指して練習していくことになるであろう。
しかし、右肩痛で大学4年時の春は2試合に先発したのみ、復帰した秋は1試合で完投したものの、長いイニングをシーズン通して投げることに不安はある。
さらに和田(15勝)、武田翔太(14勝)、千賀滉大(12勝)、東浜巨(9勝)、中田賢一、バンデンハーク(ともに7勝)と実績のあるメンバーが揃う先発陣のハードルはなかなか高く、いきなりその一角に食い込むのは難しい(カッコ内は2016年の勝ち星)。
それならば短いイニングを任せるリリーフで使う、という手も考えられる。
同じ大卒ルーキーの速球派では、山崎康晃(亜細亜大→DeNA)が2015年に新人ながらクロ―ザーとして37セーブを挙げ、新人王を獲得した。2年間、中継ぎで活躍し、3年目から先発に転向した攝津正の例もある。
今季、軒並み成績を落とし、勤続疲労が出ているソフトバンク中継ぎ陣へのカンフル剤として、田中ほど適した人材はいないはずだ!
V奪回を目指す福岡ソフトバンクホークスのカギを握るのは、黄金ルーキー・田中正義になるだろう。
文=溝手孝司(みぞて・たかし)
札幌在住。広告代理業を営みながら、ライター、イベントなどスポーツ関連の仕事もこなす。ドラフト2位でソフトバンクに入団した古谷優人が、友達の友達の息子だということが判明した。友達の友達なので直接面識は全くもってないが、個人的に応援したい!