プロ野球で観客を沸かせる勝負といえば、同じ学年の「ヨコつながり」対決と、同じ学校の先輩後輩の「タテつながり」対決。
ドラフト指名を受けた選手が、対戦したい相手を聞かれた時、同級生や高校の先輩の名前を挙げることが多い。これはファンにとっても、楽しみな勝負だ。
今年5月に実現した、松井裕樹(楽天)と森友哉(西武)の同学年初対決は、名勝負の第一章を感じさせるものだった。大阪桐蔭でバッテリーを組んだ森と藤浪晋太郎(阪神)の同校先輩後輩対決は、今年のオールスター最大の見せ場だった。
つながりの中でも、特に濃いのがタテでもヨコでも交わる同じ学校の同級生。
昨年のドラフトでも、横浜の浅間大基、高濱祐仁が揃って日本ハムから指名され、九州国際大付からも2人がプロ入り。2012年ドラフトでは、春夏準優勝の光星学院に北條史也(阪神)と田村龍弘(ロッテ)がいた。
広陵時代はバッテリーを組んでいた野村祐輔(広島)と小林誠司(巨人)のように、ドラフト指名された年が違うケースも含めれば、高校3年を共に過ごした仲間と、プロで再会というのは珍しくない。
4年前、2011年の夏の覇者・日大三からは、大学4年になった卒業生3人がプロ志望届を提出。東京六大学リーグ通算最多安打記録に並んだばかりの高山俊(明治大)、横尾俊建(慶應大)、畔上翔(法政大)は、いずれも野手で直接対決はならない。しかし、プロ入り後は、3人が競争するように成長していく姿を想像するだけで楽しみだ。
全国制覇を果たした2001年の日大三には、エースの近藤一樹(オリックス)ら、一挙4人がプロ入り。同じ年のドラフトで、一つの高校から4人がドラフト指名というのは、史上最多タイの記録であった。現在も近藤が現役を続けている。
同じ学年から、ごっそりプロ入りした例で、真っ先に思いつくのがPL学園。1977年度の第23期卒業生から、2001年度の第47期卒業生まで、続けてプロに選手を送り出した年月は、なんと四半世紀にも渡る。
KKドラフトとして歴史に残る1985年の清原和博と桑田真澄に続き、のちには松山秀明、今久留主成幸、内匠政博がプロへと進んだ。
KKでも果たせなかった、春夏連覇を達成した1987年度の卒業生には、同年ドラフトで立浪和義と橋本清が1位入団。野村弘樹(当時は弘)が3位で指名を受け、その4年後には片岡篤史も加わった。いずれもプロで結果を残しており、改めて優秀な学年だったことが分かる。
2001年度卒業組では、今江敏晃(ロッテ)ら4人がプロ入りを果たした。しかし先日、小斉祐輔が引退を発表して、現役選手は今江のみとなった。
かつてのPL学園のように、出身選手が大当たりで信頼のブランドを築いているのが横浜高校だ。松坂大輔を擁して春夏連覇を達成したチームからは、松坂を含めて同級生4人がプロへ。しかし、高校野球の頂点を極めた名門校であっても、全員がプロで成功とはいかないことに、プロ野球の厳しさを痛感してしまう。
10月22日に迫った今年のドラフトでも、夏の甲子園を制した東海大相模の小笠原慎之介、吉田凌の両投手、そして準優勝の仙台育英にはエース佐藤世那と、甲子園3本塁打の大型ショート平沢大河がおり、それぞれの行方は注目度が高い。
果たして今年は、同じ高校出身・同学年選手は指名されるのか?実現すれば、多くの観客を呼べる対決になるだろう。
文=小林幸帆(こばやし・さほ)
野球狂の母親に連れられ、池田がPLに負けた一戦を甲子園で見た小2の夏休みから高校野球ファンに。ヤクルト大好きの女子高時代は、ビニ傘片手に放課後を神宮球場で過ごす。