2年ぶりに復活したアジアウインターリーグ。各チーム16試合のレギュラーシーズンを戦い、参加5チームのうち上位4チームがプレーオフ(1位対4位、2位対3位のそれぞれの勝者が一発勝負の決勝戦で戦い、優勝を決める)に進むという方式で行われた。20日の決勝戦では台湾の大学生が中心の「中華培訓」がNPBに逆転勝利。郭李建夫監督率いる「中華培訓」がアマチュアながらも韓国、日本のプロを打ち破っての優勝を果たした。
「2年ぶりの開催」ということは、つまり昨年はやむなく中止となってしまった。その原因は資金不足。このウインターリーグは、ラテンアメリカやオーストラリアのそれと異なり、独立した組織が運営するのではなく、台湾プロリーグ・CPBLの主催による若手選手育成を目的とした短期のリーグである。そのような事情から興行としては事実上、成立しているとは言えない。今年はとにかく観に来てもらおう、と平日の試合に関してはスタンドを無料開放し、週末の金・土・日のみ入場料を取る、という方式にしたものの、どの試合も100人を超える程度の観客しか集まってはいなかった。
台湾は現在国際社会において「国」として認められていない。オリンピックなど国際スポーツシーンで「チャイニーズ・タイペイ」というネーミングで出場しているのはそのためだ。このような状況から、台湾は常々、国際社会にその存在をアピールしようと考えている。その1つの施策として、台湾にとって国際政治上の「宿敵」である中国が、かつて「ピンポン外交」を行ったように、台湾国民が「国技」として熱狂する野球を通じて「台湾」をアピールしようとしている。
だからこそ、「国際大会の開催実績とその成績は台湾野球界にとって重要だ」と関係者は言う。このウインターリーグにアジア以外のチームを招待する意味がここにある。
「(過去に参加した)ドミニカ共和国のチームは向こうのウインターリーグの都合もあって、決してレベルの高いチームではありませんでしたが、アジア以外の野球を経験させることは、台湾の若い選手にとってもいい経験になるんですよ」(台湾野球関係者)
もちろん、政治的な意味合いだけではなく、選手たちにとっても意味があることとして、これからもいろいろな地域から参加を募ろうと考えているのだろう。
このウインターリーグに参加したすべての選手が将来的にトップ代表入りするわけではない。しかし、世界の野球を体感したDNAは確実に台湾球界全体に広がっていく。
今回は、大学生を中心とする代表チーム「中華培訓」も初参加していた。
実は、台湾でもプロとアマチュアの関係はうまくいっているわけではない。その改善という意味もあり、「中華培訓」の参加を依頼し、実現した、という話だ。また、選抜チームに選ばれた多くの大学生選手は来年のドラフト候補。選手にとってはプロへのアピールと、いつもより刺激ある試合を経験でき、プロ側(CPBL)にとっても選手の最終チェックができた。このウインターリーグは有効に活用されていることだろう。
そして、なによりも筆者が嬉しく思うのは、このリーグが世界の野球の振興に貢献していることを実感したことだった。
今回初参加の「麗寶欧州」はプロアマ混成の若手中心のチームだ。しかし、「プロ」と言っても、実際はオフにアルバイトで糊口をしのいだり、シーズン中も兼業したりしている選手が大半だ。野球だけで食べていける選手は皆無だろう。
「麗寶欧州」のメンバーで、2015年3月に行われた日欧野球のメンバーでもあるフランス人投手、オーウェン・オザニックは留学先のアメリカで野球に出会い、その後、オーストラリアのウインターリーグで「プロデビュー」を飾った。現在は母国のスポーツクラブでインストラクターをしながらプレーを続けているという。