今年もペナントレース制覇、日本一を目指すべく各チームが始動。キャンプやオープン戦の様子がテレビやネットで中継され、お茶の間でも楽しめるようになった。
球団によっては練習の合間にインタビューも流れ、選手たちは自分の言葉でファンへ自身の状態や仕上がりを伝えてくれる。もちろん、プロ野球選手は話すことが仕事ではないが、こういった発言でメディアは賑わいファンも喜ぶ。その言葉は貴重な情報だ。
そんなプロ野球選手がときとしてつぶやく名言をシチュエーション別に紹介したい。
学校や職場、家庭、地域などさまざまなコミュニティのなかで人は生活し、生きている。ときには当然、失敗することもあるだろう。営業結果が奮わなかったり、試験で点数が低かったり……。そんなときに思い出したいのが田中広輔(広島)の言葉だ。
「終わった過去のことは言ってもしょうがないから」
田中はミスをしても狼狽えることなく、それを受け入れて次のプレーに集中することを心がけている。もちろん、反省することは必要だ。しかし、失敗したものは失敗したものなのである。過去を振り返っても消えることはない。そうであるならば、未来を見て生きていく。そう思わせてくれる言葉だ。
また、仲間が失敗をしたときにかけたい言葉が別にある。落合博満氏が中日の監督時代に、フライを落球した名手・英智にかけたこの言葉だ。
「あいつが捕れなきゃ誰も捕れない」
「捕れない」の部分は失敗した事柄に応じてアレンジできる。これは最大限信頼していたことの裏返しでもあり、失敗したとしても、上司や先生、仲間からこの言葉をかけられれば、救われるのではないだろうか。
失敗だけではなく、生きていればつらいときが必ずやってくる。仕事や勉強で追い込まれているときもあるだろう。そんなつらいときに思い出したいのが菊池涼介(広島)の言葉だ。
「どうせつらいことをやるのであれば、笑顔でやったほうがいいじゃないですか。そのほうが乗り越えていける気がします」
超人的なプレーを見せるプロ野球選手といえども人間だ。つらいときは当然やってくる。そんなときでも、いや、だからこそ菊池は笑顔を忘れずにプレーしてきたという。苦しいことを乗り切っていくためにも、笑顔を忘れずにいたいものだ。
また、菊池はこんなことも言っている。
「すべてのことは、心からはじまる」
これは野球以外にももちろん通じる言葉だ。仕事や学校で厳しい試練に向かわなければいけないときがあるだろう。そんなときに少しでも弱気になっていたら、うまくいくものもいかなくなってしまう。「病は気から」という言葉もある。なにごとも心で負けてはいけないのである。
気持ちで負けず、つねに笑顔が菊池の源と言えそうだ。
仕事や学校と家族。どちらを優先するのか、時と場合によって変わってくるだろう。なかには約束を破りそうになってしまうことだってあるかもしれない。
そんな状況に陥ったときは、再び、落合氏の言葉に耳を傾けたい。
「親子の約束を破ってはいけない」
2007年シーズンのことだ。落合氏(当時中日監督)は息子である落合福嗣くんにこう言われた。「2位、3位だったらスキンヘッド」と。そのシーズン、ナゴヤドームでの最終戦。2位に終わったことで、福嗣くんとの約束通りに丸刈りにして監督挨拶を行ったのだ。
結果として2位から日本一まで勝ち進んだが、CSから日本シリーズの大一番の前に、すかさず親子の約束を守ったのである。いかなるときでも親子(家族)の約束を守る姿勢、それが落合氏の生き様なのである。
■参考文献
『広島東洋カープ語録集 ぶちええ言葉』(セブン&アイ出版)
『落合語録〜人生を勝ち抜く「俺流」語録』(加古大二・著、トランスワールドジャパン)
文=勝田聡(かつた・さとし)