6月15日、赤松の放った1打は、史上初のコリジョンルールにより、アウト判定が覆ってのサヨナラの1打となった。
ビデオ判定に要した時間はおよそ10分。サヨナラが確定すると、誰よりも早いスピードで赤松がグランドに飛び出した。
10分間、判定を待たされたファンはこの劇的な展開に歓喜。グランドを疾走する赤松に大声援が飛んだのはいうまでもないだろう。
赤松がサヨナラ打を放ったのは、2010年の5月10日以来2度目。もはや伝説と化している、前田健太(現・ドジャース)とダルビッシュ有(現・レンジャーズ)の至高の投手戦のとき。この伝説の一戦に終止符を打ったのが赤松であった。
今回のコリジョンサヨナラもだが、赤松は出場試合数以上に記憶に残るプレーを演じてきた。
その最たるものが、2010年8月4日のDeNA戦でのホームランキャッチだ。
DeNAの4番、村田修一が放ったホームラン性の大飛球を、フェンスに駆け上りキャッチ。このスーパープレーは日本のみならず海外でも紹介さされ大きな話題となった。
「日本プロ野球史上最も衝撃的なキャッチだ」
そう紹介されたこのプレー。その言葉に偽りはない。
このような劇的なプレーの数々が、ファンの心を掴んで離さない。赤松は何かしそう。そんな期待感をファンは常に持っているのだ。
まるで忍者のような身体能力。それが赤松の最大の魅力だろう。
広島の中心選手、丸佳浩、菊池涼介が、ある雑誌のインタビューでの「チームで欠かせないものは?」という問いかけに対して、口を揃えて言ったのが、「赤松の走塁」だった。
丸、菊池ともに走塁に長けた選手。その2人が口を揃える赤松の走塁。彼らをして、欠かすことができないと言わしめる走力。そのレベルの高さが伺える。
単純な足の速さもさることながら、赤松はその走塁技術をチームメイトに惜しみなくアドバイスする。その姿勢、貢献度が技術を超えて欠かすことができない理由なのかもしれない。
先の西武戦でのヒーローインタビューでも赤松は、
「レギュラーだとか、出ていない選手だとか関係なく、フィールドに立つ以上は全員がレギュラーなので、一生懸命やるだけです」
試合に出ていなくてもチームへ貢献することを忘れない。ダイナミックなプレーに隠されたチーム愛と、その姿勢。それこそが、選手、ファンから支持される理由なのではないだろうか?
9月で34歳を迎え、ベテランの域に達した赤松だが、今年は課題の打撃も絶好調。まだまだ衰えは感じられない。今年も数々の劇的なプレーで、ファンを湧かせてくれるのは間違いないだろう。広島の優勝には赤松の力が不可欠だ。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)