まず、日本のGMの特徴を挙げると、「メジャーリーグのGMほどではないもののも、編成部長よりも大きい権限を与えられている」ということ。
例えばトレードに関して、編成部長なら「一度、上と相談します」となる。ところが、GM同士の話しならば、その場で決定することができるそうだ。
とはいえ、チームによってGMの仕事ぶりは異なる。高田氏によると「日本ハム時代は現GMと統括部長と私の3人で相談しながら決めていたが、DeNAではそれを1人でやっている」と、その違いを説明する。
「1人でやっている」分、DeNAのGM職はハードで責任も重いようだ。
GMの「目利き」を考える上で気になるのは、「GMは選手のどこを見ているのか」ということ。
高田氏は自身の「目利き」のポイントについて、「野手の場合は『センス』、投手の場合は『ボールの質』」と述べた。『野球太郎』では、具体的な選手名を挙げて紹介しているので、ぜひ読んでいただきたい。
ちなみにドラフト指名候補選手の「性格」に関してのコメントもあるのだが、性格は情報だけでは深く把握できないものだし、ケースバイケースで変わるものなので、「あまり心配はしていません」という意外なものだった。
この見解は、スカウト的観戦をするファンだけでなく、現役の選手にとっても大いに参考になるはずだ。
GMはドラフトに向けてひとりひとりの若手をチェックすることも重要な任務だが、同時に、チーム全体を俯瞰する目も求められる。
チームの選手構成を踏まえた上で指名選手の選考を行うのはもちろんだが、獲得の際には、支配下登録枠における投手と野手のバランスも考慮するとのこと。
DeNAでは過去に「投手が多くて実戦で投げる回数が減った」という問題が起きたという。これは育成を掲げるチームとしては避けなければならない事態なので、高田氏は「支配下登録枠の使い方」という部分にも目を光らせているのだ。
高田氏の見解に触れると、GMにとって一番重要な仕事は「チームの『今』と同時に『未来』を考えること」だということが見えてきた。
今年のドラフトでは、GMが存在するチームの指名選手をいつも以上にじっくりと見てみたくなった。指名された選手の顔ぶれから、GMを置いていないチームよりも色濃くチーム事情が浮き彫りになると思うからだ。
(※本稿は『野球太郎No.020』に掲載された「ドラフトライター・蔵建て男が直撃! プロスカウトは逸材のどこを見ているのか? 高田繁(横浜DeNAベイスターズ・ゼネラルマネージャー)の場合」をリライト、転載したものです)
文=森田真悟(もりた・しんご)