そんなラミレス監督からレギュラーの座を与えられた選手は4人いる。まずはセンターの桑原将志だ。
かつて、DeNAの外野手争いは熾烈を極めていた。両翼にはすでに筒香と梶谷がおり、レギュラー獲りのチャンスがあるのは外野の要である中堅だけだった。その座を巡って桑原、荒波翔、関根大気らスタメン級の選手が激しい競争を繰り広げられた。
なかでも荒波はゴールデン・グラブ賞の受賞歴を持つ名手でもあったが、レギュラーとなったのは打撃に勝る桑原だった。ここ一番の勝負強さと長打力が桑原の最大のセールスポイントとなった。
かつては内野手だった桑原は、イップスなどの理由から外野にコンバート。しかし、持ち前の明るさとメンタルの強さで這い上がってきた。結果、守備も好調な打撃と相乗効果的に守備も向上したのだ。
倉本も独特の役割でレギュラーの座を確固なものにした選手だ。今季のペナントレースでは5月上旬以降、倉本が「9番・遊撃」に固定されている。昨季、高打率でシーズンをキープしたことが評価され、陰のリードオフマンとして「9番」というポジションを与えられたのだった。
現状、倉本が9番に入るために投手は8番に置かれている。この「8番・投手」というインパクトは強いが、これは倉本を影の1番として機能させることで攻撃力を上げるのが目的のオーダー。どのような効果を発揮できるのか、推移を見守りたい。
宮?敏郎がラミレス監督にレギュラーの座を与えられたのは、今季の7月のことである。
それまで三塁や二塁で起用されることもあった宮?だが、以前は凡ミスが目立ち、拙守が不安視されていた。しかし、最終的には宮?の傑出したバッティング技術がラミレス監督の我慢強い起用法によって開花したといえよう。
その証として、今季、宮?は首位打者を争う打者としてブレイク。その正確なボールコンタクトや広角な打撃は球界トップクラスと評価を上げている。
今年の3月頭に、戸柱恭孝は開幕マスクを言い渡されていた。しかも、その時点で戸柱は故障を抱えていたにも関わらず、である。
戸柱は、ラミレス監督からレギュラーの称号を与えられた選手のなかではキャリアも、チーム歴も最も浅い。しかし、戸柱への信頼は絶大だった。守備への信頼はもちろん、投手とのコミュニケーション力も評価されたポイント。配球については一家言を持つラミレス監督だけに、捕手は最大の関心事だったが、戸柱の台頭でその課題はクリアされたように見えた。
しかし最近、戸柱を脅かす存在として嶺井博希が現れた。以前から勝負強い打撃には定評があったが、今では山崎康晃ら特定の投手との相性や安定した打撃で評価を高めつつある。
嶺井は、ラミレス監督が目をかけた戸柱からレギュラーの座を奪い取る存在となるか。もしそうなれば、「ラミレス監督がレギュラーの称号を与えた選手」からの初めてのレギュラー奪取というケースとなる。さすればチームはさらに活性化するだろう。嶺井の活躍を密かに期待している。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)