今年の春季キャンプでベテランの村田修一と三塁のポジションを争った岡本和真(2014年ドラフト1位・智辯学園)。オープン戦で18試合に起用されたが、打率.164、0本塁打と結果を残せなかった。
開幕1軍入りは果たせなかったが、イースタン・リーグでは圧倒的な打撃を見せている。23日現在、144打数40安打、打率.278、リーグ最多タイの7本塁打に、リーグダントツの42打点。
ルーキーだった昨年は、がむしゃらに振り回している印象が強かった。しかし、今季は下半身に安定感が生まれ、スイングにぶれがなくなった。
4月8日のDeNA戦では、三浦大輔と対戦し初球のスローカーブを一閃。打った瞬間にホームランとわかる特大の当たりを放った。軸足に力をしっかりとためた、見事なスイングだった。
成長を感じさせるのは長打力だけではない。状況に応じて、逆方向にも強い当たりを打てるようになり、ただ振り回す選手ではなくなった。リーグ最多5犠飛や、安打以上の打点数を記録していることからも、岡本の成長を感じる。
課題と言われている守備だが、打球に対する足の運びに拙さが残っているものの、送球は昨年と比べて安定している。現状、1軍の三塁は村田が打率.311、4本塁打と結果を残している。守備の安定感を考えても無理に岡本を起用することはないだろう。しかし、新外国人のギャレット・ジョーンズが不振で2軍で調整することになった。岡本は一塁を守ることもあり、来週から交流戦も始まる。指名打者を敷く試合は9試合あるが、岡本を起用してもいいのではないか。
開幕から野手はほぼ不動のメンバーが並んでいる巨人。得点力不足に悩まされる中、岡本は絶好の起爆剤となるはずだ。
大分工高時代は1年時から公式戦に登板。3年夏には同校を17年ぶりの甲子園に導いた田中太一。2010年のドラフト3位で巨人に入団したが、1軍での登板がないまま、2014年オフに支配下選手から育成選手となった。
サイドに近い腕の振りからコンスタントに150キロ前後を記録するストレートに、カーブやスライダーを交え、高い奪三振率を誇る。と、ここまで見るとなぜ支配下選手ではないのかと思うのではないだろうか。なぜ育成選手のままなのか。大きな要因は制球力のなさだ。昨年までの田中は、ストレートも変化球もボールの行方はボールに聞いてもわからないというほど、制球がままならなかった。球が速いだけ、というのが昨年までの田中だ。
今季は、昨年とは見違えるほど制球力がついた。時折とんでもないボールを投げることもあるが、低めにキレのあるストレートを投げる回数が格段に増えた。とはいえ、まだ課題は残っている。空振りを取れない点だ。150キロ前後のストレートで見逃しのストライクを取ることはあっても、追い込んでからファウルで粘られることが多く、なかなか打ち取れない。ファウルを重ねるうちに甘く入った球を痛打される場面が何度もある。
巨人の1軍リリーフ陣は、クローザーの澤村拓一をはじめ、スコット・マシソン、山口鉄也と名前は挙がるが、以前のように相手をねじ伏せることが少なくなった。夏場に向けて、ひとりでも多くのリリーバーを確保したい。田中はまだまだ課題があるものの、昨年からの成長を考えれば、短期間で劇的によくなる可能性もある。球の質は1軍レベルの田中が、コンスタントに力を発揮できるようになれば、一気に1軍の勝利の方程式入りをしてもなんら不思議ではない。
文=京都純典(みやこ・すみのり)
1977年、愛知県出身。出版社を経て独立。主に野球のデータに関する取材・執筆を進めている。『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)、『野球太郎』(廣済堂)などに寄稿。1軍はもちろん、2軍の成績もチェックし、分析している。