本日11月25日、シーズンの締めくくりとして「NPB AWARDS 2015」が開催される。
タイトルホルダーや最優秀選手賞などを表彰するプロ野球の年間表彰式で、今年は初めて会場に100名のファンを招いて行われる。
プロ野球各部門で表彰される選手たち。どのタイトルでも立派ではあるが、なかでもプロ野球人生で「チャンスは一度だけ」という希少価値がつくのが新人王。
「2年目のジンクス」という言葉があるように、新人王を獲得した選手の翌シーズンは、過度なプレッシャーがかかる面もあるのだ。
「NPB AWARDS 2015」開催前の本稿執筆時点では、今年の新人王は、セ・リーグは山?康晃(DeNA)でほぼ決まりな一方、パ・リーグは消去法で有原航平(日本ハム)が一番の有力候補となっている。
山?は37セーブを挙げて、新人最多記録を更新。DeNAが今シーズン62勝だから、その6割近くに貢献したことになる。一方の有原は8勝をマークしたものの、規定投球回数未満で防御率4点台後半と、どこか足りない感じは否めない。「該当者なし」に投票する記者も多そうだ。
近年でハイレベルな争いとなったのが2013年のセ・リーグ。16勝を挙げて最多勝にも輝いた小川泰弘(ヤクルト)が、13勝の菅野智之(巨人)と高卒で10勝の藤浪晋太郎(阪神)とのデッドヒートを制し、新人王を獲得した。例年なら新人王を獲得しただろう菅野と藤浪には新人特別賞が贈られている。
3選手の2年目は、小川が9勝と勝ち星を大きく減らしたのに対し、菅野はケガがあり、勝ち星こそ1つ減らしたものの最優秀防御率のタイトルを獲得し、最優秀選手(MVP)にも輝いた。藤浪も11勝を挙げ、前年の成績を上回った。
やっぱり新人王“2年目のジンクス”と言ってもいいかもしれない。
たった一度きりの栄誉を逃した選手に対し、特別表彰・新人特別賞が与えられるのは珍しくなくなっている。この特別表彰をはじめて授与することになったのが、1987年パ・リーグの阿波野秀幸(近鉄)と西崎幸広(日本ハム)による一騎打ちだ。
ともに15勝、防御率も阿波野の2.88に対して西崎が2.89と、コンマの世界での争いとなったが、新人王は阿波野にわたり、西崎は特別表彰を受けた。
翌シーズンは、西崎が最多勝にベストナイン、ゴールデングラブと投手部門のタイトルを総なめ。
阿波野も14勝を挙げ、エースとして文句のつけようのない大車輪の働きをみせた。しかしながら、「10.19」のダブルヘッダー第2試合で痛恨の同点弾を浴びたシーンが、どうしても強烈な“がっかり”イメージとして残る。のちにトレンディーエースとして一時代を築くことになる2人の争いは、2年目のジンクスというより西崎がリベンジを果たしたというところか。
記者投票で選ばれる新人王。昨季はセ・リーグでは大瀬良大地(広島)が217票、パ・リーグは石川歩(ロッテ)が155票を集めたが、高卒ルーキーの松井裕樹(楽天)、森友哉(西武)がともに2票を獲得。成績では勝負にならなくとも、「この選手に!」という気持ちはなんとなくわかるような気がする。
今シーズンは、これといった飛び抜けた候補選手不在のパ・リーグ、?橋光成(西武)、淺間大基(日本ハム)がどれくらいの票を獲得するのかも注目だ。
高橋は44イニングを投げ、淺間は140打席に立っており、新人王の資格は今季限り。どちらもそれほど大きく資格オーバーをしているだけではないだけに、一度きりのチャンスを逃してしまうのはもったいない気もするが、新人王に目を向けずに2年目で大飛躍を遂げた松井と森のことを考えると、決して悪いことではないあもしれない。
逆に、同期の安樂智大(楽天)は今季1試合6イニングの登板のみで、新人王の資格はまだ残っている。「新人王を目指す」と言い切って入団しただけに、来季は楽しみだ。
安樂だけでなく、ほとんどの選手が「目標は新人王」とプロの世界へと飛び込んでくる。たとえ2年目のジンクスがささやかれていても、一生に一度の名誉にはそれだけの価値がある。
文=小林幸帆(こばやし・さほ)
野球狂の母親に連れられ、池田がPLに負けた一戦を甲子園で見た小2の夏休みから高校野球ファンに。ヤクルト大好きの女子高時代は、ビニ傘片手に放課後を神宮球場で過ごす。