ホセ・フェルナンデスと聞くとロッテ、西武、楽天、オリックスで活躍したあのフェルナンデスを思い浮かべる読者の方もいるだろう。筆者も最初のニュースではそう勘違いした。
まさか、シーズン中にボート事故に見舞われるわけがないと思ったからだ。今回の悲報は、別人のホセ・フェルナンデスであった。
フェルナンデスはキューバから15歳で亡命。アメリカの高校に通い2011年にマーリンズからドラフト1巡目指名された。
亡命時にボートから落ちた母親を、フェルナンデスが海に飛び込み助け出した話は有名だ。
2013年にMLBデビューを果たし新人王を獲得。2014年はトミー・ジョン手術を受けシーズンの大半を欠場するも、2015年に復帰。復帰後は手術前と同じような投球を見せ、2016年の飛躍が期待されていた。
その期待に応え、フェルナンデスは今シーズンもまさにエースの投球でマーリンズの投手陣を支えていたのだ。
フェルナンデスの今シーズンの成績を見てみよう。
【2016年成績】
29試合:16勝8敗/防御率2.86/投球回182.1/奪三振253/与四球13/与死球6
奪三振率は脅威の12.5を誇っている。
(※奪三振率:1試合(9回)における平均奪三振数)
今シーズンの日本球界における主な投手の奪三振率は下記の通りだ。
【先発】
大谷翔平(日本ハム):10.9
則本昂大(楽天):10.1
藤浪晋太郎(阪神):9.9
【リリーフ】
ジャクソン(広島):11.7
松井裕樹(楽天):11.1
サファテ(ソフトバンク):10.3
あらためて、フェルナンデスのすごさがわかるのではないだろうか。先発投手ながら日本屈指のリリーフ投手たちよりも奪三振率が高いのである。
(成績は9月26日現在)
◎突然の悲報に試合中止から黙祷
フェルナンデスの死亡が確認されたのは現地時間で明け方の3時半。当然、日が明ければ試合はある。しかし、マーリンズは試合中止を発表した。
これを受け、全米各地で行われたその他の試合でも黙祷が捧げられた。そして、いくつかのチームのベンチには、「“16”FERNANDEZ」と記した自チームのユニフォームが掲げられた。
この光景を映像で見ると涙が止まらない。
◎背番号16を永久欠番に
マーリンズはフェルナンデスの背番号16を永久欠番にすることを発表。現地時間9月26日のメッツ戦で全員が「“16”FERNANDEZ」を着用し、それを背番号“16”の最後の試合とすることを示唆した。
この試合でマーリンズの先頭打者、ディー・ゴードンは左打ちにも関わらず右打席に入り1球目を見逃した。これはフェルナンデスが右打ちということもあり、ゴードンはフェルナンデスのヘルメットを着用して追悼の意を捧げたのだ。
そして本来の左打席に入ると、3球目をライトスタンドへ鮮やかなホームラン。今シーズン、ホームランを放っていなかったゴードンがこの場面でホームランを放ったのである。フェルナンデスに捧げるホームランとなった。
ゴードンはダイヤモンドを一周しホームインすると胸を二度叩く。ベンチに戻るとチームメートと涙の抱擁。時が止まったかのようだ。
この日の試合結果は記憶に残っていない。
マーリンズのまとめ役マーティン・プラドはインタビューでこう語った。
「プロである以上試合は戦わなければいけない。でも俺達は人間なんだ」
当たり前のようにスーパープレーを見せてくれるメジャーリーガー、プロ野球選手たちも私達と同じく人間なのだ。
フェルナンデスのご冥福を心からお祈りしたい。
R.I.P Jose Fernandez.
文=勝田 聡(かつた さとし)