開幕戦という独特の雰囲気の中、大会注目の右腕・柳川健大が登場した。1球ごとに違いのあるスライダーを投げわけるなど、鋭い指先感覚を披露し、序盤は神村学園高の各打者がスライダーに狙いを絞っても、バットは空を切った。しかし、結果的には、よりレベルを上げてきた相手に12安打を浴び、早々と姿を消した。7回に3番・山本卓弥に痛打されるなど、左打者に対しての精度という課題もみえたが、それよりも必殺・スライダーの相乗効果をもたらすという意味で、ストレート主体へとギアチェンジする方法もあったはず。「投球パターンを変えて相手の策略を覆す」そんな修正能力も欲しかった。
経験を積み重ね、着実に完成度を高めていくタイプだと思うが、精度向上と投球の幅を覚えれば、ガラリと好転する可能性を秘めている。
甲子園ではリリーフで1イニングのみの登板だった立部峻長が、鮮烈な印象を残した。体格的に投手としては大きくないが、ボールの質が素晴らしい。体重移動での勢いがあり、腰がグイっと前に出てきて、捕手に近い地点でリリースできるため、常時130キロ台後半のストレートは球速表示以上のスピードに感じる。将来的にストレートが140キロ台中盤まで伸びてくれば、リリーフとしてプロで見たくなる。
昨秋に度肝を抜かれた「高校野球の1番打者」らしからぬ腰をねじ切らんばかりのフルスイングを楽しみにしていた仲山晃輝だが、結果的にそのスイングをさせてもらえなかった。岩国・柳川健大が変化球中心の組み立てで、肩すかしを食ったような消化不良のスイングが続いた。変化球への対応を次戦までにクリアするには時間がなさすぎるだけに、夏までの宿題として取り組んでほしい。外野守備は、動き自体は機敏とは言えないが、スローイングでリリースの瞬間にダイナマイトに着火するような爆発力を感じる強いボールがいく。
左膝を肩につけるくらい高く上げる山城大智のライアン投法は相変わらず。昨秋の明治神宮大会では優勝に貢献したものの、本調子からは程遠かった。しかし、センバツでは本来の投球を披露した。報徳学園を相手に打たれる気配すら感じさせない、安定感のある投球で4安打完封。昨秋よりもスピード、球質が向上したストレートで勝負できるようになり、スライダーなどの変化球がより生きるようになった。130キロ台の沈むボールは新球か?