開幕ローテーション入りへの道は、秋山にとって甘くはないのは確かだ。
すでに、先発投手として次の4名は確定している。今年も開幕投手が確実なメッセンジャー。2017WBCで奮闘している藤浪晋太郎。昨季、2ケタ勝利を挙げた岩貞祐太。WBCオーストラリア代表との壮行試合で好投した能見篤史。
おそらく秋山はローテーションの5、6番目の枠を次の5名の投手で争うことになる。
そのライバルは昨季4勝を挙げ、よりパワーアップした青柳晃洋。完全復活にかける岩田稔。岩貞に続く若手左腕として期待される横山雄哉。彗星のごとく現れたドラ2ルーキーの小野泰己だ。
2月25日の日ハムとのオープン戦に先発した秋山は、4回を被安打1、7奪三振で零封。この試合はオープン戦の初戦だった。オープン戦の初戦で先発を命じられる投手は、そのシーズンで最も期待される若手が務めることが多い。
首脳陣の期待に応えた秋山は、3月8日のロッテ戦でも5回を投げて被安打2、自責点ゼロの好投を見せる。秋山はこの好投でローテーションの残り枠をかなりの高確率で手繰り寄せたようだ。
今季の秋山はマウンドで口を一文字に結んでおり、その真剣な表情からは意気込みがひしひしと伝わってくる。
ルーキーイヤーでいったんはプロの喜びを知り、その後大きな壁にぶつかりプロの厳しさを知った。
先のオープン戦での1球1球丁寧にコントロールされたボールは、この経験が最大限に生かされた結晶だろう。以前、勝てなかった時期に垣間見えた弱さは感じられず、今はマウンドでどっしり構え、安定感が増した。そんな秋山がまぶしくもある。
昨季9月16日のDeNA戦、24年連続勝利をかけて登板した三浦大輔(DeNA)に投げ勝ち、秋山は4年ぶりの勝利を挙げた。この1勝も自信につながったのだろう。
昨年の秋季キャンプでは、金本知憲監督から「秋山がとてもいい」と賞賛されるほど調子を上げ、春季キャンプで自分の型を確固たるものにしていった。
精神的にも技術的にも成長した秋山が次に目指すべきものは、やはり先発での2ケタ勝利。
幸い今季の阪神打線の得点力は、若手の台頭による激しいポジション争いの結果、昨年を上回っている。
秋山が今春に見せているような丁寧な投球を徹底し、試合序盤で大崩れさえしなければ、打線の援護で勝ち星を積み重ねていくことは可能だ。
プロ8年目を迎える「かつての大型新人」が、遅ればせながら大きく花開くときがようやくやってきたようだ。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。