各地で幕を開けた夏の高校野球。甲子園切符をかけた地方大会では毎年のように名勝負が繰り広げられてきた。今回は、昨夏の地方大会決勝戦の激闘を振り返りたい。
大阪桐蔭 10対8 大冠
昨夏の大阪大会決勝は大激闘だった。決勝に駒を進めたのは横綱・大阪桐蔭と府立校の大冠。大冠は積極的な打撃で3回表に3点リードを奪うも、大阪桐蔭打線の猛攻に遭い、8回終了時点で4対10。勝負は決したかに見えた。
しかし、大冠打線の反撃はここからはじまった。9回表、長短打を集め、なんと4点を返し、なおも2死一、二塁の大チャンス。一発が出ればサヨナラの場面にまで迫った。惜しくも逆転はならなかったが、「王者を苦しめた府立校」として、大冠は一躍全国区に。この夏も大阪桐蔭と大冠は北大阪で同地区。再戦が待ち遠しいカードだ。
おかやま山陽 8対8 創志学園(延長11回降雨コールド)
おかやま山陽 9対2 創志学園
昨夏地方大会の決勝で大激闘を演じたのは、おかやま山陽と創志学園。7月28日、甲子園を賭けた戦いは創志学園が8回表まで5点のリードを奪い、試合を有利に進めていた。しかし、8回裏におかやま山陽打線が大爆発。一挙6点で7対6と試合をひっくり返せば、今度は9回表に創志学園が再逆転。9回裏におかやま山陽が1点差を追いつき、試合は延長戦に突入した。しかし、11回表に突然のゲリラ豪雨。降雨コールドで引き分け再試合にもつれ込んだ。
再試合で魅せたのは、おかやま山陽の背番号10・大江海成。前日は5失点といいところがなかったものの、再試合では8回までノーヒットノーランの好投。最後は足が攣って降板したが、見事な修正能力を発揮した。創志学園も9回2死から2点を返したが、時すでに遅し。おかやま山陽が9対2で2日にわたる激闘を制し、初の甲子園切符を手にした。
東海大菅生 6対2 早稲田実
ちょうど1年前の高校野球界を思い出すと、中心は間違いなく早稲田実の清宮幸太郎(現日本ハム)だった。ライバルは日大三・櫻井周斗(現DeNA)。秋の東京大会決勝では櫻井が清宮から5三振を奪い、両者の対決に期待が注がれていた。
そんな中、沸々と闘志を燃やしていたのは東海大菅生だ。2014年から2016年まで、夏の西東京大会では3年連続準優勝。2015年の決勝では「スーパー1年生・清宮」を擁する早稲田実に8回から6点リードをひっくり返され、3年生の涙を見た。もう負けるわけにはいかない。準々決勝で日大三を破って勢いに乗ると、決勝では早稲田実に完全勝利。2年前の大逆転負けを糧にした3年生が西東京の2強を倒し、最後の夏に意地を見せた。
文=落合初春(おちあい・もとはる)