開幕が延期となり、見通しがつかないプロ野球界だが、なによりも新型コロナウイルス渦の収束を願うのみ。開幕戦に関する過去の出来事を振り返りつつ、2020年シーズンのスタートを待ちたい。
今回の開幕延期は、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念してのものだが、今年と似たような状況になったのが2011年だ。
この年の3月11日、東日本大震災が発生し、楽天の本拠地である仙台も被災。さらに、福島第一原発の事故により電力供給も不安定になっていたことから、パ・リーグは、予定していた3月25日開幕を延期し4月12日とすることを発表。一方で、セ・リーグは、当初の日程通りの3月25日の開幕を主張していた。
しかし、国をはじめとした関係各所から、セ・リーグの方針に疑義が呈され、選手会もこれに反対を表明。震災被害の甚大さも相まって「こんなときに野球なんて…」と世論も逆風に。結局、セ・リーグは3月の開幕を断念。4月20日セパ同時開幕に落ち着いたのだった。
開幕戦の名勝負といえば、なにはともあれ金田正一(元国鉄ほか)と長嶋茂雄(元巨人)の対決だろう。
1958年4月5日、後楽園球場で行われた巨人対国鉄の一戦。この年がプロ9年目、前年までに441試合に登板し182勝と、すでに確固たる地位を築いていた大投手・金田に対し、東京六大学リーグでベストナインを5回受賞し、鳴り物入りで立教大から巨人へ入団したルーキー・長嶋。
あの金田に長嶋がどこまで通用するのか。多くの野球ファンが注目するなか、「3番・三塁」で先発出場した長嶋だったが、結果はなんと4打席連続三振。バットに当たったのは、中途半端なスイングでファウルになった1球だけで、すべて空振り三振という完敗に終わった。
なおこの試合では、巨人はスタメン9人のうち、長嶋だけでなく8人が三振を喫し、試合も4対1で国鉄の勝利。金田は、延長11回を1人で投げ抜き、4安打1失点、14奪三振と貫禄を見せつけたのだった。
ただ、この試合の悔しさがバネになったのか、長嶋は引退までに開幕戦で通算10本塁打(1970〜1974年の5年連続を含む)を放っており、これは今も残る歴代最多記録となっている。
なお、ONつながりで補足しておくと、翌1959年に高卒ルーキーとして開幕戦からスタメン起用された王貞治も、金田相手に2三振を喫している。
2017年の開幕カード、広島対阪神の3連戦。3月31日の開幕ゲームは10対6で阪神が制したが、2戦目は初戦を上回る乱戦で、10回裏に広島・安部友裕の内野安打により10対9で広島がサヨナラ勝ち。3戦目は、カープ打線が序盤から爆発し、9対1のワンサイド。
両軍合わせて、3戦で70安打、51四死球、13失策という、乱雑とも言いたくなる試合の連続で、とくに、2戦目に記録した1試合28四死球というのは、これまでの26四死球を80年ぶりに更新する新記録となった。
開幕からこれでは先が思いやられる、と両チームのファンは案じただろうが、これがわからないもので、この年、セ・リーグを制したのは広島、そして2位が阪神だった。開幕カードの様子からシーズンを占うことなんて、不可能に近い!?
文=藤山剣(ふじやま・けん)