個人タイトルはシーズンの成績で決まるものがほとんどだが、中には記者の投票によって選手が選ばれるタイトルもある。先日、今シーズンのゴールデン・グラブ賞とベストナインの受賞者が発表された。この2つのタイトルは記者投票によって選出された。
セ・リーグのゴールデン・グラブ賞の中で、もっとも激戦だったのが遊撃手部門。受賞した鳥谷敬(阪神)が104票を獲得したのに対して、次点の坂本勇人(巨人)は91票。その差は13票だった。
鳥谷と坂本は、ベストナインの同部門でもワンツーだったが、こちらは鳥谷の176票に対して坂本は64票と、大きく水を開けられている。
◎チームの顔同士!鳥谷と坂本を比較
両者とも球団の顔と言うべき存在で、人気もある。ペナントレースでは、巨人が2位、阪神が3位と、坂本の所属チームのほうが上だったものの、投票を集めたのは鳥谷だった。それでは、個人成績はどうだったのか、簡単に比較してみる。
《出場試合》
鳥谷 143試合
坂本 130試合
《守備率》
坂本 .982
鳥谷 .977
《失策数》
坂本 11
鳥谷 14
《打率》
鳥谷 .281
坂本 .269
《本塁打》
坂本 12本
鳥谷 6本
《打点》
坂本 68打点
鳥谷 42打点
出場試合数では、全143試合でグラウンドに立った鳥谷に対して、坂本は4月にふくらはぎを痛めて登録抹消になるなど130試合にとどまった。これは鳥谷に分がある。
守備では、遊撃手部門でリーグトップの守備率をマークした坂本がややリードか。
打撃3部門では、打率は鳥谷、本塁打と打点では坂本という結果となっている。1番打者での出場が多かった鳥谷よりも、クリーンアップを任されていた坂本のほうが打点が多くなるのは当然だろうが、得点圏打率でも鳥谷の.265に対して坂本は.323。勝負強さは坂本が上回った。
上記データを踏まえると、総合的には両者にそこまでの差はないようにも思える。とくに、守備がテーマのゴールデン・グラブ賞は坂本でもおかしくないように思える。しかし投票制ということで、その権利を持つ記者へのアピールが不足していたということなのだろう。
ちなみに坂本は、先日まで行われていたプレミア12で、遊撃手として全8試合にスタメン出場し、この大会での最優秀守備賞を獲得している。ただ、この賞が決まったときには、すでに両タイトルの投票期間は終了していた。
もちろん、シーズン中の活躍で決めるべきものだが、もし、プレミア12での活躍も加味されていたなら、ベストナインはともかく、ゴールデン・グラブ賞の13票差は、あるいは逆転していたかもしれない。
いずれにしても、圧倒的な成績を残せば、多くの記者が納得して投票するはず。坂本には来季のさらなる奮起を期待したい。
文=藤山剣(ふじやま・けん)