第100回全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)は大阪桐蔭(北大阪)が、史上初となる2度目の春夏連覇を達成し、16日間の戦いを終えた。これで野球に一区切りをつける選手もいれば、プロを始めとした上の舞台でプレーを続けていく選手もいる。
連載企画「キラ星誕生! 今夏、ドラフト戦線に躍り出た男たち」の後編では、引き続き今夏の活躍をもってドラフト戦線に急浮上しそうな選手を取り上げたい。
王者・大阪桐蔭をもっとも苦しめた投手と言っても過言ではないのが、高岡商(富山)の山田龍聖だ。佐賀商(佐賀)戦では途中で足がつるアクシデントがあったが、7回1失点の好投を見せて初戦突破。続く佐久長聖(長野)戦では9回4失点で完投勝利を挙げ、同校初の甲子園2勝を成し遂げた。
その勢いに乗って臨んだ大阪桐蔭との一戦では、3失点を喫するも完投し、11三振を奪っている。2点を失った3回には1死二塁の場面で藤原恭大、根尾昂を伝家の宝刀スライダーで連続三振に打ち取った。
甲子園では24回を投げ26奪三振、防御率2.25と結果を出した。しかし、それ以上に大阪桐蔭相手に好投した事実のほうがポイントは高い。
U18アジア選手権・高校日本代表に選出された山田は、国際舞台でも好投を見せてくれるだろうか。「のびしろ」がありそうな高校生左腕だけにドラフトで注目を浴びそうだ。
「読み方は?」、「なんて読むの?」。SNSにおいてそんな投稿も目立ったのが常葉大菊川(静岡)のエース・漢人友也(かんど・ともや)だ。初戦の益田東(島根)戦では7回途中7失点と打ち込まれたが、2戦目の日南学園(宮崎)戦ではわずか88球で完封勝利をマークする。
甲子園での最速は140キロに届かず138キロだったものの、変化球とのコンビネーションで緩急をうまく使い、凡打の山を築いていった。現時点での漢人は、決してドラフト上位候補というわけではない。150キロを投げたり、強烈な切れ味の変化球があるわけでもない。しかし、緩急を使って抑えることができる投球は魅力だ。
上のレベルで通用するかは未知数だが、おもしろそうな素材ではある。上背は180センチとまずまず。あとは62キロの体重をどこまで増やすことができるのかが鍵となりそうだ。
右の大砲候補として注目を集めそうなのが北村恵吾(近江、滋賀)だ。センバツ準優勝校の智弁和歌山(和歌山)とぶつかった初戦では、2本塁打を放ち、4打点をマーク。それを皮切りに、4戦で12打点を挙げ、4番としての役割を十二分に果たした。
182センチ83キロと体格はガッシリしており、その見た目通りにパワー溢れるスイングをみせる。ドラフト1位候補ではないが、中位から下位で指名される大砲候補の位置づけとなりそうだ。近年でいえば石垣雅海(酒田南[山形]→2016年中日4位)、細川成也(明秀学園日立[茨城]→2016年DeNA5位)と同じような指名のされ方に近いだろう。
プロ志望届を提出するのは確実と見られており、「ロマン砲」としてプロ入りすることを期待したい。
大谷翔平(エンゼルス)と見間違うような風貌の渡邉勇太朗(浦和学院、南埼玉)も今大会で躍動。3試合で21回1/3を投げ、22奪三振をマークした。
準々決勝の大阪桐蔭戦では6回途中4失点でマウンドを降り、再び戻った9回にも1失点と打ち込まれてしまった。しかし、3回戦の二松学舎大付(東東京)戦では10個の三振を奪い完封勝利を挙げるなど、本格派らしい投球を見せている。
190センチ90キロの体格に背番号「11」。150キロ近いストレートを投げる投球フォームはまさに大谷そのもの。現時点では大谷ほどのインパクトはないが、U18アジア選手権・高校日本代表にも選出されており、さらに評価は上昇するかもしれない。
文=勝田聡(かつた・さとし)