■高校野球
アマチュア野球最大の祭典、全国高校野球選手権は今年も甲子園で開催される。各都道府県の大会を勝ち抜いてきた49代表が日本一をかけて戦う。一昨年は小笠原慎之介(東海大相模高→中日)、昨年は今井達也(作新学院高→西武)と優勝校から2年連続でドラフト1位選手が出ている。
今年の注目は何といっても、入学直後から高校野球界を牽引してきた清宮幸太郎(早稲田実)。怪物は最後に再び夏の甲子園にやってこられるか。
また、タレント揃いの大阪桐蔭高は2度目の春夏連覇を狙う。センバツ準優勝に終わった安田尚憲(履正社高)、総合力の高い増田珠(横浜高)らドラフト上位候補も甲子園での活躍を期待したい。
注目の選手:清宮幸太郎(早稲田実)、安田尚憲(履正社高)、増田珠(横浜高)など
■大学野球
侍ジャパン大学代表が挑むユニバーシアードが台湾で開催される。前回は決勝が雨天中止になり、日本と台湾の両国優勝で幕を閉じた。今年は単独チャンピオンを狙う。
東京六大学リーグでアマチュアレベルを超えたパワーを見せている岩見雅紀(慶應義塾大)の特大弾をこの大会で期待したい。また、サイドスロー気味のフォームから140キロ台中盤のストレートを投げ込む左腕・齊藤大将(明治大)にも注目。前回の優勝メンバーでもある下石涼太(東海大)は、貴重な経験をチームに伝えることでも貢献してくれるだろう。
注目の選手:岩見雅紀(慶應義塾大)、下石涼太(東海大)、齊藤大将(明治大)など
■社会人野球
都市対抗本戦が終わり、秋シーズンに向けて一息入る時期だが、地区連盟が主催するJABA(日本野球連盟)の公式大会が開催される。JABA高山市長旗争奪大会には西濃運輸など社会人チーム以外に、東海地区の強豪大学チームが参戦。JABA広島大会にはカープの2軍も出場する。ともに興味深い大会になりそうだ。
注目出場予定選手:獄野雄貴(西濃運輸)、宮地翔太(三菱重工広島)など
■高校野球
2018年の甲子園出場を目指し、新チームによる新たな1年が始まる。まずは、来年春のセンバツ出場をかけた秋季大会が各地区で開始。来秋のドラフト候補選手をいち早くチェックしておくのもいいだろう。
ミレニアム世代と呼ばれる2000年生まれ(現2年)の選手たちは、評価の高い世代だ。「大阪桐蔭四天王」と呼ばれる根尾昂、中川卓也、藤原恭大、山田健太。早稲田実の4番・野村大樹。「ポスト清宮」と囁かれる野村佑希(花咲徳栄高)ら、現3年生同様に野手の逸材が目立つ。一級品の投手の登場も楽しみにしたい。
注目の選手:根尾昂(大阪桐蔭高)、野村大樹(早稲田実)、野村佑希(花咲徳栄高)など
■大学野球
各連盟の秋季リーグが行われる。4年生にとっては最後の公式戦。大学野球の集大成を見せてくれるだろう。
一昨年、4割を超える打率で東京六大学リーグの首位打者に輝き、その勢いでドラフト2位指名を勝ち取った重信慎之介(早稲田大→巨人)のように、ドラフト直前であっても、秋季リーグで高いパフォーマンスを発揮すればスカウトの高評価を得られる。
注目選手に挙げたいのは草場亮太(九州産業大)。肩痛から完全復活を遂げ、150キロを超える球速を連発しているが、今秋も故障なく投げきれればドラフト1位候補に躍り出るだろう。
また、今春の東都大学リーグで屈辱の未勝利で終わった140キロサブマリン・高橋礼(専修大)の復調はなるか。最速148キロの四国屈指の右腕・小久保氣(四国学院大)は結果を出してプロ入りを勝ち取りたい。
注目の選手:草場亮太(九州産業大)、高橋礼(専修大)、小久保氣(四国学院大)など
■社会人野球
11月に行なわれる日本選手権の地区予選が始まる。都市対抗と比べレギュレーションが厳しくなっており、よりスリリングな「一発勝負」が堪能できる。また、早い段階で日本選手権出場を早く決めているチームが、プロアマ交流戦と呼ばれるNPB球団のファームとのオープン戦を行うこともある。
昨年は日立製作所が巨人3軍と戦い、3対5と惜敗だった。同チームの二塁・田中俊太や外野の菅野剛士は自身の実力を試す貴重な経験になっただろう。
今年はトヨタ自動車、東京ガスがすでに日本選手権出場を決めている。150キロ右腕・石田光宏(東京ガス)、プロ入りに勝負をかける北村祥治(トヨタ自動車)の本戦でのプレーとともに、プロアマ交流戦が行われるようであれば、あわせて注目したい。
注目出場予定選手:石田光宏(東京ガス)、北村祥治(トヨタ自動車)など
■高校野球
新チームによる秋季大会は、東京と北海道を除き、各都道府県大会で上位に入ったチームによる地区大会に移る。センバツ出場校を選出する大会となるため、出場校は何としても上位に進出したい。
また、3年生を中心にしたチームが参加する国体が愛媛で開催される。主に夏の甲子園のベスト8進出したチームが参加。規模は小さいが、高校生活最後の公式戦として定着している。甲子園の再戦を楽しみにするファンも多い。
昨年の国体は履正社高が優勝。寺島成輝(ヤクルト)が快投を見せ、大会直後のドラフト会議で1位指名を受けた。
筆者としては、「もし夏の甲子園に出場し、準々決勝以上に進出したら」という条件つきではあるが、古屋敷匠眞(八戸工大一高)、森井絃斗(板野高)、村上宗隆(九州学院高)が国体に出るなら注目。ドラフト直前にスカウトの評価をもうひと上げしておきたい。
注目の選手:古屋敷匠眞(八戸工大一高)、森井絃斗(板野高)、村上宗隆(九州学院高)など
■大学野球
秋季リーグも終盤に入り、順位も確定していく時期。ここで東京六大学リーグと東都大学リーグを除いた各リーグの上位校が、明治神宮野球大会の出場権をかけて、地区代表決定戦に挑む。限られた出場枠をめぐる戦いは、4年生の集大成の場ということもあり、熾烈を極める。
なかでも注目したい大会が横浜市長杯(関東大学野球選手権)だ。昨年は、田中正義(創価大→ソフトバンク)、佐々木千隼(桜美林大→ロッテ)、濱口遥大(神奈川大→DeNA)、大山悠輔(白鴎大→阪神)とドラフト1位指名選手が4人も出場する空前の盛り上がりを見せた。今後もさらに注目度の高い大会になっていくだろう。
注目の選手:今村曉人(白鴎大)、大平達樹(桜美林大)、小豆澤誠(上武大)など
■高校野球
新チーム結成後、最初の全国大会となる明治神宮野球大会が行なわれる。各地区の秋季大会を制したチームが集結。翌春のセンバツ前哨戦の意味合いを持つ大会でもある。一昨年は高松商高、昨年は履正社高が優勝。ともに翌年のセンバツでは準優勝に輝いた。
投手の肩が作りづらい寒い時期に行われるため、打撃戦になる傾向が強い。下位打線でも得点を奪えるチームが上位にくるだろう。
(注目の選手は出場校が未確定のため割愛)
■大学野球
高校野球と同様に、明治神宮野球大会が開催される。大学球界では秋の全国大会という位置づけであり、アマチュア球界の一年を締めくくる重要な大会だ。ドラフト指名を受けた選手の出場もあり、プロ入り前にそのプレーを堪能できる貴重な機会でもある。
近年は、東京六大学リーグと東都大学リーグのどちらかのチームが優勝を独占。神宮球場を本拠地とする強みを十分に生かしている。まずはハイレベルなリーグで優勝する必要があるものの、出場となれば、柳澤一輝(早稲田大)、長谷川裕也(法政大)、飯田晴海(東洋大)らの活躍に期待したい。
注目出場予定選手:柳澤一輝(早稲田大)、長谷川裕也(法政大)、飯田晴海(東洋大)など
■社会人野球
秋の全国大会となる日本選手権が京セラドーム大阪で行なわれる。都市対抗、地方連盟大会、地区予選とあらゆる大会の成績から出場チームを決める方式をとっている。補強選手制度もないため、掛け値なしで社会人野球日本一のチームを決める大会ともいえる。
こちらもドラフト会議後に行なわれる大会であるため、指名選手の観戦が可能。昨年はオリックスから1位指名を受けた東京ガスの山岡泰輔が、そのオリックスの本拠地で投げる粋な展開となった。今年もオリックスの指名選手が出場するケースが見られるかもしれない。
注目の選手:北川利生(日本通運)、猿川拓朗(日立製作所)
運命のドラフト会議。今年は10月26日に行なわれる。少し早いが、現時点でドラフト上位指名が有力視される選手を挙げていきたい。
■高校
まずは何と言っても清宮幸太郎(早稲田実)。高校卒業後の進路は夏の大会が終わるまで明言しない姿勢を見せているが、プロ志望届が提出されれば、間違いなく今年度の最大の目玉だ。
その清宮に次ぐ評価を得ている安田尚憲(履正社高)は、定評のある打球の強さに加え、三塁の守備も日に日に上達している。守備面も加味して、清宮以上の評価を与える球団が出てくるかもしれない。
投手では今のところ、上位指名濃厚と断言できる選手は見当たらないが、安定感、制球力、スタミナなどの総合力が高い金久保優斗(東海大市原望洋高)を推したい。長いイニングを投げてくれる先発投手が欲しい球団にとっては、見逃せない逸材だろう。
また、今春に一気に評価を上げた本田仁海(星槎国際湘南高)も面白い。夏までにまた一皮むけるようだと、ドラフト戦線を賑やかしそうだ。
■大学
投手では、昨年からケタ違いの豪速球を披露している草場亮太(九州産業大)のポテンシャルの高さが目立っている。故障なく、今の状態をキープできれば、1位競合の可能性もある。
高橋遥人(亜細亜大)、馬場皐輔(仙台大)も劣らぬ実力の持ち主。フォームを変えるなど、試行錯誤が続く宮台康平(東京大)の動向にも注視したい。
野手では、山崎剛(國學院大)、宮本丈(奈良学園大)が走攻守で高いレベルにある。内野手の世代交代を進める球団からの上位指名は十分あり得る。また若い捕手の確保が急務な球団が、大平達樹(桜美林大)を上位でするかもしれない。
■社会人
アマチュアNo.1投手との呼び声高い田嶋大樹(JR東日本)が頭一つ抜けた存在。よほどのアクシデントがない限り、複数球団から重複指名されるだろう。
膝の大ケガから復活した西村天裕(NTT東日本)もドラ1候補。プロでも即戦力として活躍できる逸材だ。
野手では、好調な打撃を維持している藤岡裕大(トヨタ自動車)の存在が目立つ。昨年は外野手を経験したことで守備の幅を広げた。レギュラー候補としてはもちろん、リザーブとしてベンチに置いておきたい球団も多いだろう。
強肩強打の捕手・松本直樹(西濃運輸)は配球面で成長できれば上位に食い込んでくるはずだ。
前編と合わせて、アマチュア野球の1年間を掘り下げてみた。今年のドラフト候補選手だけでなく、翌年以降の対象選手も見ていくことで、野球の楽しみ方も広がっていくだろう。
ここで紹介していない選手たちも、短期間の急成長を遂げるケースは珍しくない。そういった選手の発見もまたアマチュア野球観戦の醍醐味だ。年間の観戦ケジュールを立てて、贔屓の選手をチェックすべく球場に足を運んみてはいかがだろうか。
文=長嶋英昭(ながしま・ひであき)
東京生まれ、千葉在住。小学校からの友人が、サッカーのU-18日本代表に選出されたことがキッカケで高校時代から学生スポーツにのめり込む。スポーツの現場に足を運びながら、日本各地の観光地を訪れることが最大の生きがい。現在はアマチュアカテゴリーを中心にスポーツ報道の仕事に携わっている。