楽天1位 近藤弘樹・150キロを超える剛腕にして技巧派へも変幻自在
2017年プロ野球ドラフト会議で、総勢82名の選手が指名された。
2018年からのプロでの活躍に期待したい。
週刊野球太郎では、ドラフト会議の直前にインタビューした指名選手18名を特集!
プロで活躍するために戦ってきたドラフト候補と、彼らの「真価」を最も熟知している監督さんを取材した貴重な「証言」をお届けします。
今回の指名選手
楽天 ドラフト1位
近藤弘樹(こんどう・ひろき)
186センチ95キロ/右投右打。1995(平成7)年6月27日生まれ、広島県広島市出身。安佐北高では2年秋に県8強。岡山商科大では3年秋に侍ジャパン大学代表候補に選出。4年春は7勝1敗、防御率1.00で最高殊勲選手賞を受賞し、大学選手権では近畿大戦で1失点完投勝利。最速153キロのストレートと高速チェンジアップを軸に巧みなゲームメイクを見せる。
赤木貫人監督の証言
★最初の印象
入学直前の3月末に学校のグラウンドに来て、ブルペンでの投球を見たのが最初の出会いです。「力のあるボールを投げているな」という印象を受けました。
★まれにみる「賢さ」
入学当初はインステップの部分だけを指導しましたが、1年秋から順調に育ってくれました。というのも近藤は自分で習得して技術を高める力がものすごく高い。聞いたことでも自分でアレンジしたり、自分で「合う・合わない」の判断ができます。あそこまで賢いのは稀ですね。その中で僕が話をしたのは「ストレートにこだわれ」ということです。1年秋には140キロ後半を投げていましたし、それだけの球速を出せるピッチャーはなかなかいませんから。
★「侍ジャパン合宿」後の成長
3年になって力任せの部分が出て勝ち星を挙げられなくなりました。感情が表に出た試合後に「お前で勝つか負けるかが決まるんだ」と怒ったこともあります。
そこで大きかったのは昨年11月の侍ジャパン大学代表候補合宿への参加です。合宿後はより練習もするようになりましたし、マウンドでも我慢できるようになりました。この春、ベンチから一生懸命に打者を応援しているのを見て「成長したな」と感じました。
★スタイルは「カメレオン」
近藤は速球派ですが、ストレートが走らなかったらお手上げというわけではありません。技巧派にも変われます。僕は「カメレオン」と呼んでいるんですが(笑)、色が一色ではない。大学選手権の近畿大戦も相手のストレート狙いを見越して、変化球を多めの配球に変えて完投勝利。「勝てる投手」になってくれたと思います。
★これから
とはいえ変化球の正確さや、インコースのストレートなど、課題はまだまだ。秋は主将に任命しましたが、ワンランク上で活躍するための訓練だと考えています。
プロでは本人がずっと憧れている黒田博樹さん(元広島ほか)のように、小さい子が憧れる投手になってほしいですね。
監督さんプロフィール
赤木貫人[あかぎ・かんと]
1978(昭和53年)年生まれ、岡山県出身。倉敷高〜岡山商科大〜サンワード貿易〜全播
磨硬式野球団〜三菱重工神戸。社会人で8年間プレーし、2011年4月から岡山商科大コーチ。2017年1月から監督就任。
本人の証言
★ギリギリだった大学進学
高校時代は最速142キロで、2校ほど推薦入試を受けましたが、不合格になったのが判ったのが3月頭でした。野球を続ける方向でしたが「どうしようか」と当時は思いました。
そこから高校の監督と仁科昭宣監督(現・総監督)が知人だった縁で岡山商科大を受験して合格したのが3月21日。直後にオープン戦で1、2試合を投げて、春のリーグ戦ですぐ登板しました。
★侍ジャパン大学代表候補合宿
投げる経験を積めたのは自分でもよかったんですが、プロを意識し始めた3年では秋に1勝のみ。「これはマズイ」と思いました。そこで大きかったのは3年の11月に参加した侍ジャパン大学代表候補合宿です。
ここで年下の選手がしっかりしているのを見て「変わらないといけない」と思い、冬場は
30メートルのインターバル走を60本くらい走ったり、トラックのタイヤ引きなど徹底的に走り込みました。
★人生初の全国大会
大学選手権は人生初の全国大会でした。要所要所でスライダーやカーブを使って抑えられましたが、大会後は下半身を中心になかなか疲労が抜けなかったです。「無駄な力が入ってしまうのも全国大会だな」と思いました。
★これから
一番の持ち味はストレートです。ただ、球が速いだけでは打たれるので、コンビネーションなども大事。現実を見ないといけないです。
そして、プロに入ることがゴールではなくて、入ってからが勝負です。まずは黒田博樹さんのようにストレートで押し、山本昌さん(元中日)のように制球力や回転数でも勝負できるようなピッチャーになりたいです。
球種に関する証言
ストレート 142 〜 153キロ
チェンジアップ 125 〜 135キロ
カーブ 108 〜 118キロ
スライダー 120 〜 128キロ
フォーク 130 〜 135キロ
ツーシーム 135 〜 140キロ
ストレートは回転数やキレにこだわっていて、球速で強弱もつけます。大学選手権の近畿大戦ではチェンジアップが有効でした。ただ、上で活躍するためにはタテの変化が必要なので今、習得中です。(本人)
フォームに関する証言
監督
肩関節は柔らかいですが、上体で押し込んでしまうことがあります。それでも150キロを超えているので、今後の鍛え方でもっと球速は上がるでしょう。
本人
フォームは黒田博樹さんの当時のフォームを中学時代に真似して、基本的にそのままです。股関節自体は硬くはないんですが、使い方には硬さがあります。ここは課題ですね。それと、左腕の使い方はみんなから「独特」と言われます。僕的には普通なんですが(笑)
グラウンド外の素顔
趣味は自転車に乗っての温泉巡り。「自分の世界を持っている」。それが近藤弘樹に抱く第一印象だ。ただ、その裏側には「ナイスガイ」の血が流れている。彼を岡山商科大に導いた仁科昭宣総監督も「人間がいいので侍ジャパン大学代表候補合宿でもすぐ周囲と溶け込んでいた」と証言。近藤いわく「大きかった経験」を急激な成長に変えられたのは、ひとえに近藤の「人間力」が大きく起因している。
本稿は雑誌『野球太郎 No.024 2017ドラフト直前大特集号』(2017年9月23日発行)に掲載された人気企画「ドラフト候補&指導者マンツーマン・インタビュー」から、ライター・寺下友徳氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。
取材・文 寺下友徳
記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします