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FA&トレード損得勘定3選。鮮やかにハネた一岡竜司(広島)。大竹寛(巨人)との交換は理想型

文=藤山剣

FA&トレード損得勘定3選。鮮やかにハネた一岡竜司(広島)。大竹寛(巨人)との交換は理想型
 連載企画『あのFAとトレードの損得勘定。お得だったのはどっち?』では、昨年オフから年明けにかけて行われたトレードやFAについて、どちらの球団が「お得」だったかを考察してきた。

 残るは、FAで阪神に移籍した糸井嘉男と、その人的補償でオリックスに移った金田和之のみ。

 金田は2014年に先発、リリーフで5勝を挙げているとはいえ、やはり首位打者と盗塁王のタイトルを獲得している糸井の実績には及ばない。しかも、糸井は新天地・阪神でも開幕から主力として存在感を発揮。糸井の年俸が高額だとしても、阪神が「お得」だったのは言うまでもない。

 というわけで、今回は少し年代をさかのぼって、近年の印象的なFAとトレードを振り返り、損得勘定ははじいてみることにする。

トレードは激減している?


 かつては、FA移籍と人的補償、金銭トレード、交換トレードなどで10組以上の選手の行き来が毎年のようにあった球界だが、ここ最近は、トレード自体がめっきり少なくなっている。

 上で触れたように、昨オフは4組。2015年、2014年オフも同程度だ。

 理由は、育成枠の活用、独立リーグの拡充、複数年契約の定着、「寝業師」と称されるような辣腕フロントがいなくなった等々、いくつか考えられるが、各球団により事情もさまざまだろう。

 そんななかでも成立した、近年の注目の移籍をピックアップしていこう。

一岡のハネっぷりは鮮やか


■2013年オフ:FA
大竹寛(広島、FA権行使)⇔ 一岡竜司(巨人、人的補償)

 広島での11年間で74勝78敗という実績を引っさげ、2013年オフにFAで巨人へ入団した大竹寛。その人的補償として広島に移籍した一岡竜司。一岡の巨人時代の2年間の実績は、リリーフとして13試合に登板(勝敗なし)したのみ。当然ながら移籍前までの実績では、大竹が上だ。

 しかし、移籍先でどちらが働いたかというジャッジは白黒つけにくい。

 大竹は先発として2014年から2017年の交流戦後までの約3年半で22勝19敗。一方、一岡は勝ちパターンのセットアッパーとして2014年は31試合に登板し、2勝0敗、2セーブ、16ホールド、防御率0.58。昨季も27試合で防御率1.82と好投している。

 両投手とも故障がちでフル出場できていない年も多いだけに、比較は難しいが、活躍して当たり前のFA選手である大竹よりも、移籍後のハネっぷりが鮮やか過ぎた一岡の方が好印象。そうなると「お得感」は一岡を獲った広島か。


ユーティリティーとアンダースロー


■2014年7月:2対2のトレード
川島慶三/日高亮(ヤクルト)⇔ 新垣渚/山中浩史(ソフトバンク)

 2014年7月、ヤクルトとソフトバンクの間で2対2のトレードが成立、川島慶三と日高亮がソフトバンクに、新垣渚と山中浩史がヤクルトに移籍した。

 この4人が全盛期に見せたポテンシャルを見ると、2004年から2006年にかけて3年連続2ケタ勝利を挙げた新垣渚が抜けている。

 それだけに、「パッと見」ではヤクルトが得をしたように感じられるトレードだが、新垣はヤクルト移籍後の2年半で4勝14敗。黒星が大きく上回り2016年限りで引退した。日高もソフトバンク移籍後は2試合の登板に終わり、2015年にユニフォームを脱いでいる。

 新垣と日高での損得勘定は、どちらも期待はずれで差をつけにくい。

 残る川島慶三と山中浩史は今季も現役だが、野手と投手ということで比較は難しい。

 川島は内外野をこなせるユーティリティープレイヤー。2016年4月に塁上の交錯で右足を負傷し、その年は20試合の出場にとどまったが、選手層の厚いソフトバンクにおいても重宝されている。

 アンダースローの山中も、昨季は先発で6勝12敗と負け越しているが、防御率は3.54と踏ん張った。今季も、下半身の張りで5月中旬に2軍落ちしたものの、そこまで6試合に先発し、0勝3敗ながらクオリティスタート(6回自責点3以内)は4回。ケガ人の多いヤクルト投手陣のなかで粘りのピッチングを見せていた。

 これらを総合的に考えれば、このトレードは両球団にとって五分五分だったという判断となるか。川島、山中の今後に注目したい。


唯一の現役は右の長距離砲


■2012年オフ:3対3トレード
多村仁志、吉川輝昭、神内靖(ソフトバンク)⇔ 江尻慎太郎、山本省吾、吉村裕基(DeNA)

 2012年オフ、過去10年でも3例しかない3対3の大型トレードがソフトバンクとDeNAの間で行われた。両軍とも投手2名、野手1名という布陣でのトレードとなった。

 このなかで、今季も現役なのは吉村裕基(ソフトバンク)のみ。若手の台頭もあって取り巻く状況は厳しいが、昨季は4月17日の楽天戦で9回裏に同点弾、12回裏にサヨナラ弾と2本塁打を放ち「スカパー!ドラマティック・サヨナラ賞 年間大賞」を受賞するなど、ここ一番での決定力が光った。貴重な右のパワーヒッターとしてまだまだチームには必要な選手だ。

 実績上位だった多村仁志(ソフトバンク)は、2013年、2014年とそれなりのパフォーマンスを見せたが、年齢的なものもあり成績が落ち込んでしまった。

 4投手のなかでは、吉川輝昭(ソフトバンク)と江尻慎太郎(DeNA)が移籍初年度にリリーフとしてそれなりの活躍を見せたが、好調を持続できず。

 これらを踏まえれば、トータルで「お得」だったのはソフトバンクという結論を出すのが妥当ではないだろうか。

文=藤山剣(ふじやま・けん)

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