◆吉川尚輝(中京学院大)
今年の野手の筆頭候補は、中京学院大の吉川尚輝。三拍子揃ったプレーヤーだが、とくに守備が魅力。「獲得すれば、この先10年は遊撃手・二塁手に困らない」と評価されている。6月の大学選手権では大会を「吉川色」に染める活躍。チームを優勝に導き、大学日本代表に選出された。
吉川の持ち味である守備は、今やMLBの内野手と遜色ないとまで一部では言われている。一方、大学選手権で毎試合安打を放った打撃、50メートル走5秒7のスピードも持ち合わせており、全方位にスキがない。
このような万能型内野手であることから、大学の先輩・菊池涼介(広島)と比べられがち。ポテンシャルは菊池級なので、プロで揉まれることでさらなる急成長を遂げるはずだ。
◆京田陽太(日本大)
日本大の京田陽太は、青森山田高時代から守備に定評のある遊撃手だったが、あえてプロ志望届を出さずに進学。日本大では1年時から試合に出場すると、3年春には打撃でもチームに貢献し、チームの1部復帰の立役者に。今夏は大学日本代表で遊撃手を任されるなど、大学球界で見事に成長を遂げた。
ゴロとケンカをしない安定した守備力に加え、走力も磨かれたことで守備範囲が広がった。まだまだ成長の余地はあるものの打撃力も向上しており、大学4年間をしっかりと完走した。
守備でも打撃でも、プロではお手本になるベテラン選手がいると成長曲線はさらに上向きそう。本人が目標とする鳥谷敬(阪神)にどこまで近づけるか、注目したい。
◆九鬼隆平(秀岳館高)
今年の春夏の甲子園で秀岳館高を2大会連続ベスト4に導いた九鬼隆平。甲子園後のU-18アジア選手権でも高校生日本代表として活躍し、世代ナンバーワン捕手の名をほしいままにした。
九鬼の持ち味は、強豪の「4番・捕手・キャプテン」という重責を一手に担うことができた強靭なハート。また夏の甲子園ではランニングホームランを打つなど、オールラウンドな能力があることも証明した。
秀岳館高では、常に複数の投手をリードしてきたことから経験値も豊富。送球の早さも持ち合わせているので、高卒叩き上げの谷繁元信(元中日)のような名捕手を目指してほしい。
◆鈴木将平(静岡高)
1試合3安打は当たり前の抜群のミートセンス。誰が見ても速いと感じる走力を兼ね備える静岡高の鈴木将平。研ぎ澄まされた野球勘を持つ高校ナンバーワン外野手だ。
今年の春から夏にかけて長打が増えていたが、その集大成がU-18アジア選手権で見せた打撃。木製バットを苦にせずライトに豪快なホームランを打ち、成長力と対応力を見せつけた。
早ければ、プロでも2、3年目には「1番・センター」に定着できると言われる逸材。ゆくゆくは2000本安打にも期待したい。
◆中山悠輝(東京ガス)
東京ガスの中山悠輝は、185センチ85キロの恵まれた体格を持つ遊撃手。試合の流れが読め、誰も打てないときに打ち、失敗してもすぐさま取り返すという強いハートの持ち主でもある。
今年は打撃面でのインパクトを残すことができなかったが、レフト線への切れない打球、安定感のあるスローイング、カウントや牽制のタイミングを読んで盗塁をきめるしたたかさなど、実戦向きであることを示した。
中山は、長きに渡って日本の高校野球界、そしてプロ野球界を支えたPL学園高出身。OBを見ると立浪和義、宮本慎也、福留孝介などPL学園から羽ばたいた遊撃手は、プロでも結果を残した選手が多い。その歴史に中山は続くことができるか。
今年は投手が豊作と言われているが、野手も獲得すればセンターラインの強化につながりそうな人材はいる。
数年後に振ったとき、世代交代のカギは今年にあった。そんな思いにかられる予感が……。
文=森田真悟(もりた・しんご)