プロ野球開幕から約2カ月。セ・リーグでは、5月19日現在、2位・巨人に2ゲーム差をつけて、DeNAが首位に立ち、好調をキープしている。日本一になった1998年以来となる貯金10も記録。もはや“春の珍事”の域を出て、本物の実力が備わってきたようにも見える。セ・リーグをかき回す台風の目といってもいいだろう。
そんなDeNAの好調の要因として、野球ファンの間では「タバコを吸わなくなったからでは?」との声が聞こえる。フロントが主導する禁煙政策がようやくチームの結果として表れたという見解だ。
2012年からDeNAはタバコ禁止令を実施。新人選手や2軍の禁煙を義務化し、禁煙セミナーなどでチーム一丸となってタバコ排除に取り組んできた。今ではチーム全体での喫煙率も減ってきており、2000年代の低調期には紫煙が垂れ込めていたベンチ裏も清々しい空気になっているという。
そんな怪情報から今回、プロ野球界とタバコの関係を調べてみた。
そもそもプロ野球選手は競技性も相まって、他のスポーツに比べると格段に喫煙率が高い。特に昭和のプロ野球選手にとって、酒とタバコはマストアイテム。当然、現在のような嫌煙基調の雰囲気ではなく、一部の選手名鑑には堂々とタバコの銘柄の項目があったほどだ。
1984年〜1990年に巨人で活躍した、ウォーレン・クロマティは自著で「巨人に入った時、桑田(真澄)以外、全員が吸っていて驚いた」と語っており、高い喫煙率が伺える。
ちなみに桑田は大の嫌煙家。現役時代には移動バスの分煙化や、ロッカールームの禁煙化など、いち早く禁煙の流れをチームに取り入れさせている。
しかし、現在でもベンチ裏やブルペン裏などに灰皿が置かれている球団は多く、ファンからは見えないところで吸っている、という選手も多い。一昔前の某関西球団のリリーフ投手陣はほとんどが愛煙家で、登板が告げられると吸いかけのタバコを一気に吸い終え、そのままマウンドに向かうのが日常茶飯事だったという。
2011年には、台湾でのアジアシリーズに出場したソフトバンクが「全面禁煙」の球場内でタバコを吸った、と現地メディアに報じられた。禁煙の事実を知っていたかは不明だが、ベンチ裏に捨てられた空き箱や吸殻からは選手たちの習慣が浮き彫りになる。
最近ではアスリート意識の向上もあり、DeNAだけではなく全体的に喫煙率は減少しているが、まだまだタバコは選手のリラックス法となっているようだ。
そんなプロ野球界で現在、嫌煙家として知られるのが巨人・原辰徳監督と先述のDeNA・中畑清監督だ。
中畑監督は球団の禁煙化政策に同調し、選手たちにも厳しく指導。2014年シーズン終了後の契約交渉では、フロントとともに、捕手の黒羽根利規に「タバコを辞めなければ背番号『9』剥奪」を突きつけ、禁煙を決意させた。
原監督も選手に禁煙を勧めるなど、脱タバコに積極的な立場だ。しかし、それに抗う選手ももちろんいる。東野峻(現DeNA)は2年目の2008年に原監督から「ローテ入りの条件は禁煙」など、たびたび禁煙を勧められたが、「やめるのも意思なら、やめないのも意思」と突っぱねたという。
その謀反の情報はじわじわとファンの間に広がり、2012年オフ、オリックスにトレードされた際には「タバコが原因」と囁かれた。
しかし、大の愛煙家の東野もDeNAに拾われ、ついに禁煙を決意。昨年12月31日11時59分に最後のタバコをふかし、新年禁煙を敢行。キャンプ時には週刊誌の取材に「禁煙しました! どんどん書いてください!」と胸を張っていた。
ちなみに中畑監督も原監督も現役時代は愛煙家だった。
眉をひそめられるプロ野球選手の喫煙だが、成人を迎えていれば法的には何の問題もない。しかし、近年の嫌煙化に押され、選手たちもビクビクしているという。
その原因はネット流出だ。
「嫌煙ファンに発見されれば、すぐにSNSや掲示板に投稿され、最悪の場合、盗撮された喫煙画像が世に出回ってしまいます。本当に“煙たい”世の中ですよ」(某在京球団OB)
実際に検索してみると、確かに有名選手の喫煙画像がチラホラ。明らかに盗撮されたとおぼしき画像もあり、選手たちが人目を気にするのも納得だ。
さらに2020年の五輪に向け、スポーツ施設の全面禁煙化も検討されている。どんなに活躍しても、愛煙家選手にとっては、さらに肩身が狭い未来が待っている!?
(文=落合初春)