円陣の声出しは、本来作戦の確認や気合の入れ直しをする大事な儀式。これを杉谷が行うと、周りの選手は無反応もしくはスルーがお約束となっている。
選手プロデュースデーのイベントでは、ド派手なリムジンから選手たちが登場した際も、杉谷だけが選手の輪に入れず置いてけぼり。もちろんファンはお約束を理解した上で、大いにウケるのだ。
2014年10月1日、日本ハム一筋21年、金子誠の引退セレモニー。最後の挨拶を終え、選手に握手で出迎えられた感動的な状況で、金子は涙ぐむ杉谷に対して握手拒否のスルー。「まさかこんな場面でも…」と言わんばかりの杉谷の表情に、ファンは泣いて笑った。
2015年9月20日の西武戦、捕手・大野奨太が打球直撃で治療中の際、投手の肩を冷やしてはいけないと、杉谷が率先してキャッチボールの相手をかって出た。
この緊迫した場面で、投手のメンドーサは何と投球を拒否して座り込み。一応断っておくが、杉谷は皆から嫌われているわけではない。もちろんこれにもファンは大爆笑。
そして、杉谷へのイジリは球団や職種の垣根を越えた。西武プリンスドームでの試合前打撃練習では、ウグイス嬢による杉谷イジリのアナウンスがちょっとした名物になっている。傑作ぞろいなので、ダイジェストでご覧いただこう。
「内野も外野もベンチも守ります。スイッチヒッターの杉谷選手」
「打球が“まれに”スタンドに入ることがあります。気温も大変高くなっておりますので、熱中症と杉谷選手にご注意ください」
「この夏の杉谷選手の打球が、劇的にスタンドに飛び込む場合もございます。その瞬間をお見逃しなく」
「ただいまその人気はすでに侍ジャパン級、ファイターズの杉谷選手がさりげなくバッティング練習を行っていますが、練習中、杉谷選手の思いのほか鋭い打球がスタンドに入る場合がございます。杉谷選手の規格外の打球には十分ご注意ください。」
コント部門では満点の杉谷。肝心の本業では、今年から背番号が61から2に変更となった。この番号は過去に高代延博や小笠原道大らが着けた重い数字。杉谷はこれら偉大な先輩の後を継げるのか? いや、どちらかというと背番号1の新庄剛志、森本稀哲ラインか…。
文=サトウタカシ (さとう・たかし)