高校野球の“イマ”にググっとクローズアップしていく「2018高校野球最前線」。特に今年の夏の甲子園は100回大会という節目を迎えることで、例年以上に注目度は高まっている。
そんな世紀の大会を最大限に楽しむための春の高校野球情報を、盛りだくさんでお届けしよう。
開幕前の東北、北信越、中国大会を除き、現在は地区大会がたけなわ。趨勢が決まってきた。
東邦(愛知)といなべ総合学園(三重)の対決となった東海大会決勝では、東邦のエース・扇谷莉が力投。2対0でチームを優勝へ導いた。
扇谷は今年のセンバツの2回戦、花巻東(岩手)戦で先発したが、制球が定まらず4回までに5四死球2暴投。早々にマウンドを降りる苦い経験をした。
さらに、愛知県大会では決勝の誉戦でリリーフし、4回を1安打に抑えたもののチームは1対2で敗戦。県2位での東海大会出場だったため、悔しさを晴らすためにも東海大会の決勝は負けられない試合だったことは想像に難くない。
今年の東邦は歴代チームのなかでも「最強」と前評判を集めている。ひと皮もふた皮もむけたエースが、リベンジ街道を突き進み、夏の頂点を目指す。
5月23日に行われた関東大会決勝は、健大高崎(群馬)と日大三(東京)による大一番。両チーム合わせて31安打、4本塁打が飛び交う大乱戦になったが、15対10で健大高崎に軍配が上がった。
試合は初回に日大三が先制するも、中盤から健大高崎が反撃開始。山下航汰、高山遼太郎ら注目打者が本塁打を放ち、健大高崎打線をけん引。終盤にかけて日大三を引き離し、打撃戦を制した。
日大三も主砲・大塚晃平の一発などで応戦したが、7回表、健大高崎に7得点のビッグイニングを許したのが響いた。
昨年の健大高崎は、春の群馬県大会で準優勝、夏の群馬大会で準優勝、春秋の関東大会ベスト8と、あと一歩という結果が続いていた。しかし、今年は群馬県大会と関東大会を勝ち切った。
この勢いで夏の甲子園でも大暴れできるか。「機動破壊」の走力に、強打を加えた今年の健大高崎は注目だ。
センバツ優勝校・大阪桐蔭(大阪)が出場する近畿大会は、6月3日が決勝戦(予定)。現時点でベスト4が出揃い、準決勝では大阪桐蔭と智辯学園(奈良)、滝川二(兵庫)と智辯和歌山(和歌山)が激突する。
下馬評では大阪桐蔭が圧倒的な優勝候補だが、準決勝で対する智辯学園は奈良県大会決勝で16得点、近畿大会1回戦でも7得点を挙げるなど打線が活発。俊足自慢の左向澪、強肩強打の捕手・小口仁太郎らを中心にした打撃陣が、柿木蓮、根尾昂ら大阪桐蔭の超高校級投手陣を打ち崩せるか。真価が問われる。
また、昨年秋の近畿大会決勝、今春のセンバツ決勝戦で大阪桐蔭にあと一歩と迫った智辯和歌山はリベンジを狙っている。和歌山県大会では振るわなかったが、3番・林晃汰、4番・文元洸成らクリーンアップの調子が戻ってきているのは朗報だ。
滝川二は兵庫県大会準決勝から接戦をモノにしてきており、自分たちのペースに持ち込んで粘り強く戦えば、勝機が見えてくるだろう。
絶対王者の大阪桐蔭か、智辯勢か、それともダークホースか。四者四様のチームが勝ち残った近畿大会から目が離せない。
6月からは中国大会、北信越大会、東北大会が始まり、春の陣はクライマックスを迎える。その後はあっという間に夏の選手権大会が始まるため、高校野球ファンは息つく暇がないだろう。
しかも今夏は100年に一度のアニバーサリーイヤー。世紀の瞬間に立ち会えることは、何にも代えがたい。伸び盛りの高校生の成長を楽しみながら、夏の祭りを待とう。
文=森田真悟(もりた・しんご)