4月12日の時点で開幕13試合連続本塁打なし。2リーグ制以降のプロ野球ワースト記録を更新してしまった。総得点はたったの33で、1試合に平均するとわずか2.54点だ。
そして投手陣も深刻で、失点は驚異の89……。チーム防御率6.57という異常事態になっている。特に先発陣は金子千尋、西勇輝の柱がそろってスロースタート。いまだ勝ち星がなく、西にいたっては3戦全敗、防御率12.83と低迷している。
かろうじて、ディクソンが2勝を稼いでいるものの、新守護神・コーディエは4戦中3戦で失点し、防御率13.50でさっそく2軍降格。前も後ろも、計算外すぎる始動だ。
こうなってくると、オリックスファンの間で囁かれるのが、「2003年」というキーワードだ。
48勝88敗4分
首位・ダイエーから33.5ゲーム差、5位・日本ハムからも14ゲーム差。ぶっちぎりの最下位に終わった2003年のオリックス。
この年のオリックスといえば、伝説的な“投壊”を起こしたとして知られている。
・防御率5.95
・927失点
・被安打1534
・被打率.306
この記録はすべて、後にも先にもないプロ野球ワースト記録である。毎試合6点近く失点をすれば勝てるはずもない。
とんでもないことをしでかした2003年のオリックスだが、よく見るとシーズン防御率は5点台。実は今季のオリックスは、この2003年よりひどい“投壊”状況なのだ。現在の1試合平均失点が6.85。これに今季の試合数である143試合を掛ければ、なんと約980失点。
血も涙もなかった悪夢の年を下回る、とんでもない悲劇になってしまう可能性を秘めているのだ……!
しかし、まだまだシーズン序盤。これから投手陣が盛り返してくれる……と信じたいところだが、不測の事態もあり得る。今回、あの2003年の事態を思い出し、ショックに備えておきたい。
もちろん、オリックスの“投壊”を願っているわけではない。いわば避難訓練のようなものだ。
≪6月17日 11対21で敗戦≫
4月にフロントとの確執で石毛宏典監督が解任。後任にはレオン・リー監督が据えられたものの、攻撃力重視の戦い方で大味な試合が増えていた。
2ケタ失点は幾度もあったが、岩手県営球場でこの日、ついに20点の大台を突破した。
ダイエー |1 1 3 |0 0 6|10 0 0 |22
オリックス|0 4 1 |2 3 0| 0 1 0 |11
5回終了時点で10対5。粘り勝ちかと思われた試合が一転して、大敗に化けた。萩原淳、牧野塁、土井雅弘、戸叶尚、徳元敏…。出てくるリリーフ投手が全員炎上。この日を境に、糸がプツリと切れた印象だ。
≪7月27日 パ・リーグ失点記録の7対26で敗戦≫
一度、堰を破った水は勢いを増すばかり……。福岡ドームでのダイエー戦では、シーズン2度目の20失点が待っていた。
オリックス| 0 0 0|1 4 0|1 1 0|7
ダイエー |11 0 3|5 6 1|0 0 X|26
前日も1対15で敗れたオリックス。先発にはこの年、メジャーから日本球界に復帰した吉井理人があがった。結果は1アウトしか取れずに降板。続く本柳和也は1アウトも取れず、初回から一挙11点を奪われ、ジ・エンド。ダイエーはめでたくパ・リーグ1試合得点記録を更新した。
≪8月1日 日本記録の1対29で敗戦≫
2度あることは3度ある。悪夢の26失点からわずか6日後、オリックスはとんだ不名誉記録を打ち立ててしまった。
ダイエー |7 8 8|0 0 1|1 0 4|29
オリックス|0 0 0|0 0 0|0 0 0|1
展開は6日前とまるで同じ。この年から新加入のマック鈴木が1アウトも取れずに降板。後続の嘉勢敏弘、相木崇、小川裕介、本柳和也もボコボコに打たれた。もちろん、6日前の失点ワースト記録を更新。さらに28点差は2リーグ制以降の日本記録だった。
いかがだろうか……?
ちなみに、2003年のシーズンは、「スーパーラビットボール」と呼ばれるほど、打者に有利な“飛ぶボール”を使用していたといわれる。
今季のオリックスならば、こんな悲惨な事態は起こらないはず! と気休めになるのではないだろうか……!? 最後に、2003年はチーム失策数も132と壊滅的だったことも記しておきたい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)