ドラフト会議が約2週間後に迫る10月13日。東京・神保町のとある会議室で『極私的プロ野球ドラフト会議2018 supported by野球太郎』が行われた。
『極私的プロ野球ドラフト会議』とは、本誌『野球太郎』の読者が各球団のGMや編成担当になりきって、1位から5位まで選手を指名していく体験型仮想ドラフトイベント。
1位の指名選手が競合した場合はくじ引きで獲得球団を決め、さらに獲得した球団のGMなどから選手へ向けたメッセージを伝えるなど、本番のドラフト会議さながらの緊張感や興奮を味わうことができる。
2016年以来2年ぶりの開催となった今年の『極私的プロ野球ドラフト会議』は、根尾昂(大阪桐蔭)や吉田輝星(金足農)ら競合が囁かれる目玉候補の存在もあり、多くのドラフトファンで会場はいっぱいとなった。
この日の詳しいレポートは11月後半に発売される『野球太郎 No.029 2018ドラフト総決算&2019大展望号』で掲載されるが、週刊野球太郎では先出しでダイジェスト公開。野球ファンによる野球ファンのためのドラフトイベントの熱気を伝えたい。
先にも触れた通り、粒が揃いに揃っている今年のドラフト候補。現実世界での1番人気は根尾昂で、巨人、中日、楽天、日本ハムの4球団が1位指名を公言している。もちろん『極私的プロ野球ドラフト会議』でも、どの球団が根尾を1位で指名するかが最初の焦点となった。
各球団の入札が進みフタを開けてみると…、阪神、ロッテ、中日、日本ハムの4球団が根尾を指名。巨人、楽天が抜けたものの阪神とロッテが加わり、競合数は現実世界で囁かれるように4球団となった。そして注目のくじ引きでは…、ロッテが大金星を獲得!
一方、根尾から撤退した巨人と楽天は、奇しくも吉田輝星の指名でかち合うサプライズ。さらに吉田にはソフトバンクとヤクルトが参戦し、根尾と同じく4球団競合の末、ソフトバンクが指名権を獲得した。
ソフトバンクは昨年のドラフトで、清宮幸太郎(日本ハム)、安田尚憲(ロッテ)、馬場皐輔(阪神)と3連続でくじを外したので、『極私的プロ野球ドラフト会議』での一発回答が、本番で好結果をもたらすことになるのか気になる。
ちなみに外れ1位でも楽天と中日が梅津晃大(東洋大)で激突するなど、なかなかに一筋縄ではいかない1位指名となった。競合も含めて、あらためて1位指名選手をおさらいしておこう。
■12球団の1位指名選手
楽天:吉田輝星×→梅津晃大
阪神:根尾昂×→辰己涼介(立命館大)
ロッテ:根尾昂
中日:根尾昂×→梅津晃大(東洋大)×→野村佑希(花咲徳栄高)
オリックス:藤原恭大(大阪桐蔭高)※単独指名
DeNA:松本航(日本体育大)※単独指名
日本ハム:根尾昂×→太田椋(天理高)
巨人:吉田輝星×→渡邉勇太朗(浦和学院高)
ソフトバンク:吉田輝星(金足農高)
ヤクルト:吉田輝星×→上茶谷大河(東洋大)
西武:甲斐野央(東洋大)※単独指名
広島:小園海斗(報徳学園高)※単独指名
(※12球団の並びはウエーバー順)
1位での単独指名は小園海斗を指名した広島、甲斐野央の西武、松本航のDeNA、藤原恭大のオリックスという4球団。根尾と吉田が競合するなか、確実に実を獲りにいった格好だ。これらの一本釣りが本番でも見られたら、痛快なシーンとなるだろう。
ここからは2位以降で気になった指名をピックアップしていきたい。
まず目を見張ったのは、1位で藤原恭大を単独指名したオリックス。なんとその後も4位まで高校生を指名し続けたのだ。即戦力の社会人を厚めに指名するこれまでのドラフト方針からは想像しにくい姿を見せた。
2位から順番に見ていくと野村大樹(早稲田実)、万波中正(横浜高)、石橋康太(関東一高)。全員が関東の高校生というのも特徴的だ。まさに青天の霹靂、サプライズ指名の連続となった。
「揃って大化けしたら黄金時代到来も夢ではない」。オリックスの編成担当は、そんなロマンを見せてくれた。
また『極私的プロ野球ドラフト会議』では1位で消えもおかしくない選手が2位以降に指名されるなど、興味深い展開の綾を見せた。それを象徴するのが、巨人による笹川晃平(東京ガス)の3位指名だろう。
侍ジャパン社会人代表で4番を務めた強打の外野手は、24歳という年齢を差し引いても2位までには指名リストから名前が消えると思っていた。
しかし、どの球団かからないと見るとすかさず巨人が指名。高齢化しつつある外野陣の若返りを図れる上に、岡本和真とともに中軸も任せられる強打者を獲得できたことは、実に理にかなった指名と唸らされた。
本番さながらの成り行きを楽しみながら、西武ファンの筆者としては西武の指名も非常に気になっていた。
むしろ筆者自身が編成担当としてテーブルに着きたいくらいだったが、その気持ちをグッと抑えて指名選手を追った。
最近の西武といえば、中村剛也、浅村栄斗ら大阪桐蔭勢なくして語れない。それだけに根尾を果敢に指名するか、それとも藤原、もしくは柿木蓮まで手を広げるかなどと憶測を張り巡らせていたのだが…、結果は甲斐野の単独指名。
一瞬、残念な気持ちも覚えたが、すぐに頭のなかが切り替わった。「これぞ西武のドラフト!」。基本的に上位は投手指名。2013年の森友哉、山川穂高が例外中の例外で「やはり西武はこうでないと」と思わずにはいられなかった。
あまりにもリアリティのある指名ということで、これが“仮想”であったことをすっかりと忘れた筆者。もし同じ指名が現実に起こったとしても、きっと同様に会心の指名と考えるだろう。
話題の選手がどの球団に獲得されるのかワクワクしながら、指名選手ついて鋭い視点で語る司会役の久保弘毅氏と解説者役の菊地高弘氏という『野球太郎』でお馴染みのライターの発言を楽しんでいたら、17時から3時間にわたって行われた『極私的プロ野球ドラフト会議』はあっという間に閉会となった。
指名された選手の一覧を見ていると、どの担当者も球団の足りない部分をよく把握していると思わされる。球団への愛がなせる業、しかと見届けさせていただいた。
指名選手一覧を含めた、今回の『極私的ドラフト会議』の詳しいレポートは『野球太郎 No.029 2018ドラフト総決算&2019大展望号』で掲載されるので楽しみお待ちいただきたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)