今年も盛り上がる夏の甲子園。今夏のトレンドをまとめてみたい。
周知の通り、今年は準々決勝の翌日に加えて、準決勝の翌日も休養日が設定された。甲子園前から佐々木朗希(大船渡)の起用法をめぐる論争が起こり、あらためて投手の体調管理について問題提起されたが、休養日の追加は1月に決まっていた。ドラスティックではないが、着実に“改革”は進んでいる。
そうした流れもあり、今大会では特に投手の継投策や温存策が目立った。甲子園出場校を見ても、地方大会から5〜6人の投手を起用したチームも少なくなかった。ベスト4に入った4校も強力な継投策を繰り出してきた。
星稜は大エース・奥川恭伸がいるものの、連戦になった準々決勝では奥川を温存し、萩原吟哉と寺沢孝多の継投でしのぎ、明石商も中森俊介だけではなく、杉戸理斗、溝尾海陸が終盤まで粘った。
履正社も2年生の岩崎峻典が大躍進し、清水大成と二本柱を形成。中京学院大中京は4投手を小刻みに使い分けている。3回戦、東海大相模との一戦は、中京学院大中京が4投手、東海大相模が5投手を注ぎ込む“継投戦”になった。
どのタイミングでエースを休ませるか、継投策を念頭に置いた戦略が必要になる。それは、まるでF1のピットストップ戦略を見るような新しい感覚でもある。「エース=投手力」の時代は終わりを告げたのかもしれない。
今夏は頭部死球で臨時代走を送られるケースがやや目立った。そこで議論を集めているのは、ヘルメットの安全問題だ。
プロ野球界では近年、フェイスガード付きのヘルメットが流行し始めているが、高校野球では見ることはない。これは高校野球の規則上、一般財団法人製品安全協会が定めるSG(Safety Goods)マークがついたヘルメットしか使用を認められていないためである。
現行、フェイスガードの部分はヘルメットに取り付ける形式のため、改造とみなされる。ただ、これは「高野連も認めるべき」という感情論だけでは語れない。SGマーク付きの商品には事故が起きた際の保険が付帯しており、その問題も含んでいるのだ。
あらためて最新の技術・安全対策に制度が追いつく必要性を感じる夏になった。
7月中旬までの冷夏から一転、烈暑に見舞われた日本列島。甲子園のグラウンドでも例外なく、足がつってしまう選手も少なくなかった。暑さ対策を進める甲子園球場はベンチや裏手は涼しいが、8月はさすがに暑い。8月11日には熱中症の疑いで球審が交代するケースも発生した。
特に球審はプロテクターを着けており、イニングの表も裏もずっと日光の下で立ち続ける。暑さに関してはプレーヤー以上の負担がかかる。となると球審も“完投”というのはどうだろうか。投手の故障防止と同じく、“慣れている”だけでは不十分な根拠に見える。
球審が交代することで試合途中にストライクゾーンのジャッジが微妙に変わる危険性もあるが、人命には変えられない。審判の計画的な“継投”も求められる気候といえるだろう。
文=落合初春(おちあい・もとはる)