2019年に入り、平成もいよいよ残すところ数カ月。「平成最後の」というフレーズがすっかり耳に馴染んでいるが、新しい元号がどんなものになるのか楽しみである。
とはいえ人生の8割以上を平成で過ごしてきた筆者としては、新元号へのカウントダウンが進むにつれて一抹の寂しさも……。と、そんな手前勝手な心を紛らわすためにも、ここでひとつ「週刊野球太郎」的な平成の野球史を振り返りたい。
その名も「平成の○○王はあの男だ!」。今回は野手編をお届けする。
故障やライバルの台頭などの難門が次から次に訪れ、活躍できればよいものの1軍の試合に出場するだけでも大変なプロ野球選手。そんななかで平成元年からプロ入りした選手が、なんと昭和のスターを押しのけて出場試合数ナンバーワンに輝いている。
そんな「平成の出場試合王」は……谷繁元信(元中日ほか)!
大洋(現DeNA)でキャリアをスタートさせた谷繁は、高卒の捕手ながら1年目から80試合に出場。シーズンの皆勤賞こそないものの、通算27年間で3021試合のマスクをかぶった。
現役選手の出場試合数上位3人を見ると、福浦和也(ロッテ、2019年シーズン限りでの引退を表明)が2234試合、阿部慎之助(巨人)が2187試合、鳥谷敬(阪神)が2095試合。谷繁が大きく水を開けている。AIが野球をする時代にでもならない限り、谷繁の記録は永久に破られないかもしれない。
1試合に単打、二塁打、三塁打、本塁打のすべてを放つことで完成するサイクル安打。2018年こそ4人が達成したが、そうそうお目にかかれるものではない。
しかしその偉業を、平成に入って3回もやってのけた選手がいたのをご存知だろうか?
そんな「平成のサイクル安打王」は……ロバート・ローズ(元横浜[現DeNA]ほか)!
1993年から8年にわたって横浜・マシンガン打線の主軸を担ったローズは、1995年5月2日の中日戦、1997年4月29日のヤクルト戦、1999年6月30日の広島戦でサイクル安打を達成。
ちなみに1999年は、最終的に打率.369、37本塁打、153打点というとてつもない成績を残すほど調子がよかった。
近年は球場のビジョンでも映し出されるようになったことから、触れる機会が増えているセイバーメトリクス。そのなかでもセイバーの走りであり、一番わかりやすいと言えるのが「長打率+出塁率」で打者のよさを探るOPS。
通算OPSの歴代ナンバーワンは1.079999という数値を誇る王貞治(元巨人)だが、「平成のOPS王」はというと……松井秀喜(元巨人ほか)!
巨人で過ごしたNPB10年間での松井の通算OPSは.99566。.99041のカブレラ(元西武ほか)、.94049のタフィ・ローズ(元近鉄ほか)といった平成の怪力自慢を抑えての戴冠は、さすが“ゴジラ”と思わずにはいられない。
ちなみにOPSは1.0を超えると「超一流打者」となるのだが、日本最終年の松井は1.153を記録。数値的にももはや日本に敵はいないので、メジャーに行きたくなる気持ちも理解できる。
「平成の◯◯王はキミだ!」の 野手編はいかがだっただろうか。ほかには「平成最後の2000安打王」として福浦和也(ロッテ)を取り上げたかったが、やや無理矢理感がぬぐえなかったため、泣く泣くボツにした。
また選手でなかったので弾いたのが「平成の本塁打王輩出球団」。パ・リーグは西武がのべ12人と抜けているのだが、セリーグはわかるだろうか。
答えはのべ10人のヤクルト。バレンティンが3回、ペタジーニが2回と2人で半分を締め、パリッシュ、ハウエル、ホージーといった懐かしの助っ人も名を連ねている。
あらためて登場した選手たちを見ると、平成も長かったのだと思わされる。新元号が何年続くのか今はまだ皆目見当もつかないが、振り返りたくなる記録が作られていくことを切に望む。
文=森田真悟(もりた・しんご)