ペナントレースも折り返し地点を過ぎ、ここからが勝負どころの戦いとなる後半に突入する。前半戦をうまく乗り切った球団も、そうでない球団も、ここから先の勝負に向けて、チームに喝を入れる救世主の存在は不可欠だ。その候補となりそうな選手をピックアップしてみたい。今回はパ・リーグ編だ。
7月18日、中日の小川龍也が金銭トレードにより西武に移籍することが発表された。
小川は2015年のサイドスロー転向を足がかりにして、2016年には44試合に登板し、防御率2.27を記録。一気に頭角を現した左腕だ。今季は、1軍登板はないものの、ファームでは5月23日以降、11試合連続自責点0と調子を上げている。
西武にトレードで移籍した投手といえば、阪神では年間4勝が最高だった榎田大樹が、移籍した今季は前半戦だけで7勝を挙げている。出身チームは違うが、同じセ・リーグから加入した左腕。小川も榎田のようにチームに貢献できるか注目だ。
5月2日に1軍昇格を果たしたルーキーの清宮幸太郎。豪快なスイングで初本塁打を放ったものの、打率.179と振るわず、5月28日に2軍落ち。いくら凄い選手と言っても、まだ高卒1年目。1軍投手の壁に跳ね返されるのは当然か。
ただ、再昇格したオールスターゲーム直前カードのソフトバンク戦では、「代打・清宮」がアナウンスされると、スタンドが大きな盛り上がりを見せた。場の雰囲気を一気に変えられる存在感は、誰にでも備わっているものではない。後半戦のどこかで、チームの救世主となるべきタイミングがくるのではないだろうか。
先発、中継ぎ、抑えにまんべんなく故障者が出て、昨季の王者らしくない苦戦を余儀なくされているソフトバンク。後半戦は連勝発進だったが、3試合目に武田翔太が大炎上。チーム防御率は4点台まで悪化するなど、投手陣はさらに厳しい状況となっている。
そんな中、東浜巨が7月17日の2軍戦に登板し、4回1/3を投げて1安打無失点と、復帰への足がかりとなる好投を見せた。早ければ、8月上旬には1軍登録の可能性もありそうだ。
今季の東浜は、4、5月に登板した8試合で1勝5敗と大不振。右肩関節機能不全により5月26日には登録抹消となっていた。昨季の最多勝投手が復調し、8月以降、ローテーションに入って投げられれば、これ以上ない救世主となる。
2015年のドラフトで10位指名された杉本裕太郎。昨季まで1軍出場は通算10試合で20打数2安打だったが、今季は7月11日、17日と出場した2試合連続で満塁本塁打。プロ野球タイ記録の快挙を達成した。
これは、近年では秋山幸二(当時西武)、ローズ(当時近鉄)、ベニー(当時ロッテ)、ウッズ(当時中日)ら、名だたるホームランバッターが成し遂げている記録。これらビッグネームにはまだまだ及ばない杉本だが、今後の飛躍は約束されたと言ってもいいかもしれない。
ちなみに、杉本のニックネームは「ラオウ」。漫画『北斗の拳』に登場するラオウは救世主・ケンシロウのライバル的存在で、最後には杉本が座右の銘にもしている「我が生涯に一片の悔いなし」との名台詞を残した。杉本にもラオウのように燃え尽きるまでの活躍を期待したい。
エースとなるべき存在の涌井秀章だが、今季前半は精彩を欠いた。とくに、5、6月は防御率5点台と乱調続き。
しかし、7月に入ると6日は9回1失点、16日も7回1失点と好投。両試合ともチームは勝てなかったが、その熱投は必ずやチームの士気を上げていくはず。
混戦となっているパ・リーグの中で、なんとか5割前後で食らいついているロッテ。この先、涌井が勝ち星を重ねるようなら、一気の浮上もあるか。
左手人差し指の剥離骨折で6月16日に登録抹消となったウィーラーが、近日中に1軍復帰しそうだ。2軍戦では、7月16から18日にかけての3試合で1本ずつ安打を放ち、復調をアピール。
梨田昌孝監督の辞任により、平石洋介監督代行体制となった6月17日から善戦が続いている楽天にとって、戦力としてももちろん、ムードメーカーとしても貴重なウィーラーがベンチに戻ってくれば、チームを勢いづける追い風となる。
文=藤山剣(ふじやま・けん)