スギ花粉の季節も収まり、初夏の陽気が気持ちいい今日このごろ。高校球児にとっても一番動きやすい時期だろうが、そんな陽気のなかで春季都府県大会が各地で行われている。今回の「高校野球最前線」では注目校の戦いを追っていきたい。
先のセンバツで優勝した東邦(愛知)。平成最初のセンバツ優勝校が平成最後の大会も制するというドラマを見せたが、夏の愛知大会のシード権もかかった春季県大会では初戦(2回戦)で姿を消した。
二刀流の活躍でセンバツ優勝に貢献した石川昂弥が背番号5を背負って本職の三塁を守り、マウンドには上がらなかったものの「センバツ優勝校初戦敗退」は紛れもない事実。衝撃的なニュースだった。
試合後、森田泰弘監督は「厳しいけれどよかったと思います」、石川は「今日から謙虚に取り組みたい」と振り返った。ここから巻き返しを図ることになるが、参加校の多い愛知大会でシード権を失ったことが、猛暑で行われる夏の連戦にどう影響するか。
他地区よりひと足早く幕を開けた九州大会で話題を集めているのが興南(沖縄)。ドラフト候補のエース・宮城大弥が看板に偽りない活躍をしている。
4月22日に行われた準々決勝。相手は昨秋の九州大会で惜敗した筑陽学園(福岡)。センバツでベスト8に勝ち上がり、勢いに乗る筑陽学園だったが、宮城は6回からマウンドに上がると4イニングで8奪三振の快投。チーム逆転勝ちに貢献し、昨秋のリベンジを果たした。
佐々木朗希(大船渡)、奥川恭伸(星稜)、及川雅貴(横浜)、西純矢(創志学園)が形成する“高校四天王”にこそ名を連ねていないが、彼らに匹敵する能力を秘めていそうだ。
映画『翔んで埼玉』で話題になっている埼玉県。劇中の登場人物ほどぶっ飛んだ高校球児はいないが(当然だが……)、埼玉では実力伯仲の好チームがひしめき合ってきた。
近年の代表格はセンバツに出場した春日部共栄、2017年夏の甲子園優勝校・花咲徳栄、毎年優勝候補に挙げられる浦和学院。今年は春日部共栄のエースで4番・村田賢一(春日部共栄)、花咲徳栄の侍ジャパンU-18代表候補遊撃手・韮澤雄也(花咲徳栄)らがドラフト有望選手と目されている。
埼玉県大会の1回戦で韮澤が高校通算10号となる一発を放ち、2回戦では村田がノーヒットノーランを達成。好発進を見せた。
その一方で浦和学院は2回戦で叡明に敗れ、春季県大会は6連覇でストップした。叡明のほかにも、近年は山村学園、山村国際、昌平など新興勢力が力をつけてきている。これからどんな結末が待ち受けているのか楽しみだ。
「強いものが勝つわけでなく、勝ったものが強い」というのがスポーツの真理――。
東邦の初戦敗退のニュースを受けてそんなことを思ったが、人は修羅場を乗り越えてこそ強くなるというもの。夏の甲子園で、さらにひと皮むけた東邦ナインを見ることができるかもしれない。
何が起こるかわからない高校野球。一寸先は闇かもしれないが、その先には必ず光もある。
文=森田真悟(もりた・しんご)